本日のテーマはベースアップ(ベア)です。混同されがちですが、年齢に応じて賃金が増えていく「定期昇給」に対し、「ベースアップ」は賃金カーブそのものを底上げする増額方式のことです。ベースアップが企業にもたらす影響を、ゼネコン業界の決算書を使って、見ていきます。

大手企業によるベースアップ。
実は、イヤイヤやっている?

 最近話題となっているのが、大手企業によるベースアップ(ベア)です。トヨタ自動車と日立製作所がいち早くベアの実施を表明したのを皮切りに、日産自動車やホンダが組合の要求に対して満額回答するなど、製造業の大企業を中心にベア実施の動きが広がっています。

 しかし、こうした大手企業の賃上げは、政府に促されて渋々実施されているのが実態です。3月11日には甘利経済財政大臣が「利益が増えているのに賃金改定などを実施しない企業には、経済産業省から何らかの対応があると思う」と発言し、企業側に強いプレッシャーをかけています。

 ベースアップが政府の思惑通り景気回復に貢献するかは置いておいて、ベースアップが企業経営にとってプラスになるのかどうかを考えてみましょう。

 ベースアップとは、いわば一律に賃金を引き上げることです。ベースアップの前後で、年齢、職務、役職が同じ人でもベースアップの分だけ給料が上がることになります。

 これを企業の側から見ると、何もしていないのに去年と比べて給与の支払総額がベースアップの分だけ増加することになります。従業員に支払う給与は基本的に固定費なので、ベースアップは固定費の増加を意味します。