春の健診シーズンである。今年から特定健診──いわゆる「メタボ健診」を受ける方は、ようこそ中高年期の健康危機管理へ、といったところ。

 メタボ健診の代表的な検査項目は、(1)腹囲(男性85センチメートル以上、女性90センチメートル以上)、(2)血糖、(3)脂質、(4)血圧の4点。(1)に加え、(2)~(4)の検査項目のいずれかで黄色信号が灯ると、3カ月~半年間は生活習慣の改善を目指して保健指導を受けることになる。

 2011年度のメタボ健診受診率は45.0%で、受診者の6人に1人は保健指導の対象者、つまりメタボ&メタボ予備群だった。ただし、真面目に保健指導を受け終了した人は、その6分の1にとどまった。どうも「保健指導は面倒」という認識があり、それが受診率の低迷にもつながっている。指導逃れのため「薬を出してくれ」と迫る本末転倒組もいるらしい。

 さて、生活改善のポイントは何といっても食事。この2月に、国立循環器病研究センターの研究者らが、血圧とベジタリアン型食事との関係について複数の試験を総合解析している。それによると、肉食を抑え、野菜、豆類など植物性の食品を中心としたベジタリアン型の食事は、上下の血圧を下げることがわかった。

 異なる患者集団を長期間観察した32の研究(合計2万1604人、平均年齢46.6歳)の総合解析では、普通の食生活の人と比較して、ベジタリアン群は上の平均血圧が6.9mmHg、下の平均血圧が4.7mmHgも低かった。一方、食習慣を変えた前後で比較した七つの試験(合計311人、平均年齢44.5歳)の解析でも、上の血圧が平均4.8mmHg、下の血圧も平均2.2mmHg低下している。今後、ベジタリアン型食事のパターンをいろいろ変え(乳製品や卵は可など)比較する必要はあるが、血圧によい食生活のヒントには十分だ。野菜中心なら血糖や脂質の改善も期待できる。

 食習慣を若い頃の肉食型から、中高年期にふさわしい草食型にスパッと切り替えるのは難しい。だからこそ、第三者の冷静かつ温かい支援に頼れる保健指導を利用するのは妙手だ、と思うのだが。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド