ドラッカー365の金言
ダイヤモンド社刊
2940円(税込)

 「経済は唯一の領域ではなく一つの側面にすぎない。経済は絶対的な決定要因ではなく、制約要因にすぎない。経済的な欲求や満足は、重要ではあっても絶対ではない」(『ドラッカー365の金言』)

 資本主義に対しては重大な疑念を抱いていると、ドラッカーは繰り返し言う。経済を最重視し、偶像化している。あまりに一元的であると指摘する。

 カネを絶対視しかねないことを危惧する。特に米国の経営者の貪欲ぶりを攻撃する。スキャンダルの原因は常にカネである。1930年代にも、あまりの不平等が絶望を招き、ファシズム全体主義に力を与えることを心配していた。残念なことに心配は当たった。

 ドラッカーは、人間として生きることの意味は資本主義の金銭的な計算では表せないと言う。金銭という近視眼的な考えが、生活と人生を支配することがあってはならない。

 確かに経済は重要である。ドラッカーは「胃袋があって道徳がある」とのブレヒトの言葉を引用する。経済とは胃袋をいっぱいにすることである。

 ドラッカー自身、政治や社会にかかわることについて、コストを考慮に入れるべきことを強く主張してきた。キッシンジャーに対し、外交において経済的要因を軽視することは誤りであると指摘したこともある。

 そのドラッカーが言う。

「経済活動、経済機関、経済合理性は、それ自体が目的ではなく、非経済的な目的のための手段にすぎない」(『ドラッカー365の金言』)