北京オリンピックが迫るにつれて、メディアの報道も過熱気味になってきている。テレビでもっとも目立つのは、個人やチームの日本代表をやたらと「メダル候補」にでっち上げる相変わらずの盛り上げ報道だ。

 一方、開催に向けた中国の動向や実情などについては、テレビは無関心のようで、もっぱらそれについては新聞がさまざまな情報を伝えている。

 そうしたメディアの報道に接して痛感するのは、決定的といっていいほどの「底の浅さ」だ。象徴的なのは、IOC(国際オリンピック委員会)というオリンピック主催者の実態や問題がほとんど報道されていないことだ。それゆえ、メディアに対して、IOC批判をタブー視しているのではないか、という疑いや不信感を持たざるを得ないのだ。

サマランチ前会長が敷いた
「オリンピック商業主義」

 IOCについて批判すべきところは多々あるが、とくに重大と考える「商業主義」の問題をまずは取り上げてみたい。

 ジャック・ロゲIOC会長は、2001年の就任以来、サマランチ前会長が88年ソウル・オリンピックから敷いたIOC主導の商業主義路線を踏襲するばかりでなく、より一層徹底化している。

 本来ならばオリンピックの主催者としてIOCが堅持すべきなのは、「スポーツを人間の調和のとれた発達に役立て、人間の尊厳保持に重きを置く、平和な社会を推進する」という「オリンピズム」(オリンピック精神)である。

 しかし、IOCは、そのオリンピズムを商業主義によって壊してしまい、オリンピックを資本に奉仕するものへと変質させた。興行的価値を高めるためにショーアップし、選手をショーの材料(商品化)にすることなどは、その証しといえよう。

北京五輪で
五輪ビジネスはさらに拡大

 実際に、北京オリンピックにも国内外のさまざまな資本が参入している。