消費増税後の物価:
市場の注目を集める「東大日次物価指数」

 総務省の全国CPIは1ヵ月遅れの月次データであるため、現時点では2月分までしか公表されていない。しかし、4月1日の消費税率引き上げ(5%→8%)後の物価動向を探るうえで、有用な手がかりがある。渡辺努氏(東京大学大学院経済学研究科教授)と渡辺広太氏(中央大学 商学部助教)が開発した「東大日次物価指数」である。

 これは、スーパーで売られている食料品や日用雑貨など20万点を越える商品の日々の価格と販売数量を収集し、指数化したものである。耐久消費財やサービスを含まないため、総務省のCPIに対するカバー率は17%程度に止まるが、(1)日次データが3日後には発表される、(2)ライスパイレス指数(加重平均)であるCPIに比べてバイアス(特に上方バイアス)が少ない、という利点がある。

「東大日次物価指数」の利点:
消費税率引き上げの影響を除いて算出

 しかも、4月1日以降の同指数は、消費税率引き上げ(5%→8%)の影響を除いて算出されている。4月1日以降の同物価指数の前年同日比変化率を見ると、前年同日比がプラスとなる日が増えている(図表1参照)。

消費増税後の物価・景気と金融政策の展望 <br />7月の追加緩和シナリオを維持<br />――森田京平・バークレイズ証券チーフエコノミスト注:スーパーで扱われている食料品や日用雑貨など20万点を越える商品の日々の価格と販売数量より算出。家電などの耐久消費財やサービスは含まれないため、総務省『消費者物価指数』に対するカバー率は17%程度に止まる。2014年4月1日以降は消費税率引き上げの影響が除かれている。
出所:東京大学『東大日次物価指数』よりバークレイズ証券作成
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 これらプラスの値は、消費税率引き上げ分以上にスーパーの売値が上がっている可能性を示唆する。今まで転嫁できていなかったコスト増の一部を、この機に売値に反映しようとする姿が垣間見える。もちろん4月の前半までしかデータを確認できないため、今後の推移を見守る必要はあるが、こうした動きは日銀の物価上昇シナリオに対する自信を強める要因となりうる。

 やはり4月30日の金融政策決定会合における追加緩和の可能性は低い。