新生銀行の顧客が困惑している。昨年11月から今年8月にかけて、一部の顧客に対し、サービスの利用を抑制するよう求める手紙がたびたび送り付けられているからだ。

 対象となっているのは、新生銀行が2001年からスタートさせた総合口座「パワーフレックス口座」。この口座は、提携金融機関のATMであれば、取引手数料が回数制限なく、無料で引き出せることを最大の売りにしている。

 にもかかわらず、09年4~6月の期間中に、2二ヵ月連続して他行のATMから1ヵ月当たり10回以上引き出した利用者、約9000人に対し、引き出し回数を減らすよう求めているというのだ。

 顧客に送られた手紙には、手数料無料サービスについて、「当行としても少なからぬ費用負担を要する」としたうえで、「一定限度のお取引頻度の想定を前提としており」「サービスを、すべてのお客さまにご提供し続けることができますよう提携金融機関ATMでのお引き出しの回数を現状よりもお控えいただきたい」と書かれている。

 しかも、「ほとんどのお客さまの1ヵ月当たりのATM取引回数が4回未満」とわざわざ注記しており、あたかも4回以上は利用するなといわんばかりなのだ。

 手紙を受け取った都内在住の男性は、「口座開設時に警告があれば納得もするが、後から言うのはおかしい」と憤る。

 また別の利用者も、「他の顧客に迷惑をかけるかのような言い方にかちんときた。回数を制限されれば利便性は損なわれ、口座を開設している意味がなくなる」として、現在、口座解約を検討しているという。

 これに対し新生銀行は、「手紙を送ったのは事実だが、顧客と直接コミュニケーションを取るので、対外的なコメントは差し控える」とにべもない。

 業界内では「手数料をけちらなければならないほど追い込まれているのではないか」といった観測も流れる。というのも新生銀行は、09年3月期、1430億円の最終赤字に転落するなど、経営状態はきわめて厳しいからだ。

 だが、関係者によればそこまで深刻ではなさそうだ。

 ただ、「タクシー運転手などが、コンビニのATMから小銭を何度も引き出して両替機代わりに使うなど、サービス本来の趣旨とは違う使われ方が多いのも確か。なかには一ヵ月に200回以上引き出している利用者も少なからずいたため、当初の想定以上にコストがかさんでしまったのは事実」と関係者は明かす。

 新生銀行は、手紙を送った顧客の反応を見て今後の対応を検討する模様だが、弱かったリテール強化を図るために導入したサービスを、利用者が増えたからといって制限するとなれば顧客の理解は得づらいだろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)

週刊ダイヤモンド