「なにとぞ御高覧頂きたく存じます」

 年明け以降、みずほフィナンシャルグループ(FG)には、そうした書き出しと共に、略歴書の入った封書がいくつも届いていた。

みずほの社外取締役に課された<br />「旧行意識」の払拭という重責社外取締役の人選にあたったみずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長
Photo:JIJI

 昨年の暴力団融資を巡る問題を受け、みずほがガバナンス(企業統治)の強化策として、委員会設置会社への移行作業を進める中、送られてきた封書の数々は、委員会メンバーとなる社外取締役の候補として手を挙げる、いわば「応募書類」だった。

 決して公募をしたわけでもないのに、なぜか企業OBや金融当局OBからの書類だけは集まり、中には「他薦を装った自薦のような応募もあった」とFG幹部は苦笑いする。

 一方で、佐藤康博社長は人選に向けて、そうした書類には目もくれず、「意中の人物」に早い段階から接触を重ねていた。

 その意中の人物が、6月末の株主総会に社外取締役候補者として提示する、日立製作所前会長の川村隆氏であり、元経済財政担当相の大田弘子氏(取締役会議長)の2人だった。

「ピンポイントで、どうしてもお願いしたかった」

 記者会見で佐藤社長がそう話したように、中でも川村氏起用に対する思い入れは、相当強かったといえる。