家族皆がアウトドア派でBBQ(バーベキュー)好き! という方に生活の知恵を。

 先行研究から、グリルした肉の消費量が多いと大腸がんの発症リスクが高まることが知られている。これは、有機化合物が熱分解する際に発生するPAH(多環芳香族炭化水素)という発がん物質を食べてしまうためで、海外では食品中のPAHについて基準値を設け、規制している国もある。普段の生活では、直火焼きや鉄板焼きを避け、「ゆでる、蒸す」といった調理法が推奨される──のだが。

 しかし、ですね。大腸がんは嫌だけど、肉を焼くときのジュージューという音、すきっ腹を直撃する香ばしい匂い、何より青空の下で肉の塊にかぶりつくワイルドな醍醐味を存分に満喫したい! というのは人情デス。まして「裏庭BBQ文化」の海外では、さらに悩みが深刻のようで、スペインの研究チームから調理肉のPAHを軽減する効果的な方法について、報告が出されている。

 研究チームは、ピルスナービール、ノンアルコールビール、そして黒ビールで豚肉をそれぞれ4時間ほどマリネ。その後、炭火でじっくりグリルし、PAH濃度を調べた。

 その結果、非マリネ肉に比べて、ビールマリネ肉では、代表的な八つのPAH濃度が低下していたのである。特に、黒ビールでマリネするとPAH濃度が53%も低下。次いでノンアルコールビール36.5%減、ピルスナービール13%減だった。さらに、黒ビールでマリネした場合、抗酸化活性が高くなることが判明している。

 国内でも内閣府の機関である「食品安全委員会」で、食品中のPAHの規制が検討されているが、実行はまだ先。ちなみに、子供の体重当たりのPAH暴露量は、成人の2~2.5倍と推計されている。国の対策を待つより、家庭で自主対策を試みてもいいだろう。

 BBQ前日に黒ビールをちびちび飲みながら肉をマリネする。何となく、大人の余裕を感じさせる休日である。お父さんの株もぐっと上がるかも、しれない。当日は車移動でしょうから、ノンアルコールビールで。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド