古紙偽装問題で日本中を騒がせた製紙業界だが、その隠蔽体質はまだ直っていないらしい。

 日本製紙連合会は2日、これまで明確な取り決めがなかった「古紙」の定義を最終決定した。諮問機関である古紙配合率問題検討委員会が、製紙工場内で発生する裁断くずなどの「損紙」の取り扱いを厳格化、損紙の量を明記することにしたのだ。

 本誌3月29日号でも指摘しているが、従来案では、たとえば損紙99%、古紙パルプ1%でも「古紙パルプ100%」と表示されてしまう不備があったが、一定の防止措置が盛り込まれた格好だ。

 だがこの過程で、また業界の隠蔽体質が明らかになった。じつはせんだっての3月21日の製紙会社経営者が多数出席する理事会で、損紙について議論が集中。鈴木正一郎・製紙連会長(王子製紙会長)の下、全会一致で損紙の取り扱いを厳格化すべきだとし、具体的には事務局から検討委員会に提案させることを決議した。

 にもかかわらず、その直後の鈴木会長、梅村美明理事長による記者会見ではひと言も触れられなかった。「最終決定するのは検討委員会なので言う必要がないと思った」(製紙連)と釈明しているが、当の製紙連事務局内からも「ちゃんと説明すべきだった」との声が上がっている。

 ある製紙会社関係者は「損紙の取り扱い厳格化は工場の操業に影響を与えるので、マスコミにいろいろ書かれて問題が大きくならないよう、あえて黙っていたのではないか」と解説する。

 鈴木会長は古紙偽装問題の調査について、過去3ヵ月分だけの偽装実態を1月に発表した際には、「これで十分」と豪語していた。ところが行政から不十分と指摘されてしぶしぶ追加調査を実施した経緯がある。

 こういうときこそ、業界トップとしてのリーダーシップを発揮すべきであるにもかかわらず、相も変わらず説明責任を果たさないのであれば、業界の信頼回復など望むべくもない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)