それにしても、ひどい事件だ。ナイジェリアで起きている、少女集団拉致事件である。

 アフリカのナイジェリアにおいて2002年にその存在が確認され、2009年あたりから活発なテロ活動を行なってきた反政府勢力「ボコ・ハラム」が先月(4月)、女子ボーディング・スクールを襲撃し、200名以上(一説には250名以上)の女子学生を拉致。「奴隷として売り飛ばす」との犯行声明を堂々と発表し、国際的に大きな非難を浴びるなかで、さらに8名以上の女子学生を拉致した。また、多くの人が集まる市場も襲撃、多数の死者(125名以上とも150名以上とも報じられている)を出している。

 これらの完全に時代に逆行する蛮行に対して、世界中の要人たちも激怒。ミッシェル・オバマ米大統領夫人は激しい抗議声明を発表し、フランスのオランド大統領はナイジェリアとその近隣諸国に対して安全保障会議の開催を提案している。

 このような事件はいつもそうだが、欧米の主要メディアやアルジャジーラなどと比べて、日本のメディアでは取り上げ方というか空気感がまったく違う。

 たとえば、「TIME」最新号(5月19日号)では3ページ、「The Economist」でも数ページに渡る記事を載せている。つまり、メディア的にもまだ「終わってない」事件だというわけだ。一方、これら海外メディアの関心と比べて、日本のメディアのこの事件に対する関心は非常に低い。それでも「少女を集団で拉致して、奴隷として売り飛ばす」という犯行声明、そして「ひとり1200円」という価格は衝撃的だったようで、少しはニュース番組や新聞などでも取り上げられた。

少女ひとり1200円。
命の安さに受けた衝撃

 しかし(やはりというか)、この事件の本質的なことはあまりキチンと伝わっていない。そのことは、ある番組で某出演者が発したコメントに象徴されている。この出演者は、「ひとり1200円」という値段に触れて、「(もっと高い値段を出して)買い戻せばいいじゃないか」と発言したという。

 念のために断っておくが、この発言を僕は番組で見たわけではなく、ネットでそのような「記事」を読んだだけなので、実際にこのような発言があったかどうかは確認していない。しかし、その出演者と同じような感想を持った人が多数いても不思議ではないとも思っている。それほど「少女ひとり1200円」という値段、そのあまりの命の安さは衝撃的だったと思う。