乱気流時代の経営
ダイヤモンド社刊 1553円(税別)

 「乱気流の時代にあって、マネジメントにとって最大の責任は、自らの組織の生存を確実にすることである」(『乱気流時代の経営』)

 すなわち、組織の構造を健全かつ堅固にし、打撃に耐えられるようにすることである。急激な変化に適応し、機会をとらえることである。さもなければ、生き残れるはずがないであろうとドラッカーはいう。

 いまやあらゆる先進社会が組織社会である。あらゆる財とサービスの生産と流通が、組織の手に委ねられた。しかも組織は、1人ひとりの人間にとって、生計の資、社会への貢献、自己実現を手にする唯一の場になっている。

 「そのように大事な組織を潰すがごときは、無責任の最たるものである」

 ドラッカーがこれをいったのが、1980年というバブルの直前だった。多くの人が、今日の延長としての明日を読み、多くを儲けようとした。そうして罠にはまった。バブルが潰えたとき、生き残っていたのは、予測と投機ではなく、日々の本業に専念していた者だった。

 ドラッカーは、構造自体が変わるという乱気流の時代にあっては、まず行なうべきは、現在あるものをマネジメントすることだという。そして将来ありうべきものを自ら創造することだという。

 「乱気流の時代にあっては、未来についての最も妥当な前提は、構造そのものを変える特異な事象が生起することである」(『乱気流時代の経営』)