前回は、クリエイティブ産業が地方の活性化に貢献できることを説明しました。今回は、地方のマスメディアをどのように活用すべきか、またクリエイティブ・クラスの人が少ない地方はどうすべきかを考えたいと思います。両方の面で、現実的な地方活性化のアプローチが可能なのです。

地方のマスメディアは
地元のソフトパワーを引き出そう

 ローカル放送局や地方新聞社は、マスメディアの中でも広告収入の落ち込みが特に激しく、経営的に大変な状況になっています。ローカル局は自主番組制作比率が10%程度で残りは系列キー局の番組を再送信するだけ、地方紙は地元のニュース以外の大半は通信社の記事をキャリーするだけと、これまで経営が不在の状態でしたので、やむを得ません。

 その延長で、これまでは地域の活性化が叫ばれても、ローカルメディアの貢献が議論されることもありませんでした。しかし、現実問題として地方活性化を実現できる地元のプレイヤーがいない(自治体は使い物にならない、地元企業は疲弊している、NPOは弱い)中で、ローカルメディアは最後の砦になり得るのです。

 そして、地元の活性化に取り組むことは、ローカルメディアが新たなビジネスモデルを確立することにつながるのです。詳細は省略しますが、そのポイントは、デジタル時代におけるマスメディアのコアコンピタンスである制作力とブランド力を最大限活用することに尽きます。

 まず、地元のクリエイティブ産業の振興のためには、地元の伝統・文化や環境を美しい映像で収録し、それを地元と全国に発信することが役立ちます。地元では電波や紙を使えますし、県域規制の下でも全国にはネットを使って出せます。ローカルメディアは、制作力を強化して地元のソフトパワーの宣伝に注力すべきなのです。それが、地元の交流人口の増大と自社の広告収入の増大につながり得るはずです。