ドトール・日レスホールディングスが2007年10月に発足してわずか半年で、会長と社長が交代する。日本レストランシステム会長でホールディングス会長の大林豁史氏と、ドトールコーヒー社長でホールディングス社長の鳥羽豊氏は取締役に降格、それぞれの出身会社の経営に専念する。

 理由として、外食業界を取り巻く環境の急激な悪化を挙げる。たとえばコーヒー豆の相場は、1年前と比較して約40%上昇、日レスの主力業態である「洋麺屋 五右衛門」で使用するパスタも、1年前と比較して20~30%調達コストが上昇している。「統合効果を出すには、まず両事業会社を再強化することが重要」と、ホールディングス次期社長の星野正則取締役は説明する。

 しかし、両社の業績は現状では順調。予想外の環境変化とはいえ、両トップが事業の陣頭指揮を執らなければならないほどの緊急事態ではない。

 にもかかわらず、両社の株主や市場関係者を巻き込み、主張した統合効果の追求を第一にせず、脇に置いていいものなのだろうか。

 そもそも、両社の経営統合は日レス創業者の大林氏とドトールの創業家である鳥羽氏が主導したもの。その両名がホールディングスのトップとして統合効果を追求するのではなく、一歩身を引くのでは、「提示された統合計画はいったい何だったのか」と両社の株主などから思われても仕方がないだろう。

 その一方で、業界内外からは統合効果に対する疑問の声も根強い。

 現時点で、ストローなどの消耗品の仕入れ一本化で約5000万円のコスト削減などが統合効果として挙げられてきた。また、「コスト削減より新業態開発などの効果を期待してほしい」(次期会長の山内実取締役)と強調する。

 しかし、最もコスト削減効果が見込める食材の仕入れ一本化については、その効果を出しにくいとの見方が多い。なぜなら、「業態が似ていても効果を出すのが難しい」(業界幹部)といわれているのに、コーヒーチェーンとレストランでは扱う食材が大きく違うからだ。たとえ同じ食材だとしても、味や風味に微妙な違いがあり、仕入れ一本化は単純ではない。

 今後、明確な統合効果が示せなければ、株主からは拙速な統合だったと評価されるだろう。同社は統合の正否が改めて問われることになる。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男)