商品やサービスを提供する側に不手際があれば、補償しなければならないが、状況が複雑で責任の所在がはっきりしない場合も多い。そういうときにどこまで補償すればよいか、ケースバイケースの「指針」を固めるためのポイントを提示する。

「じゃあ、誰が悪いのよ!」

「昨日、カラーリングしてもらったけど、頭皮がかぶれてかゆい。ブツブツができて、腫れもある。どうすればいいの?」

 深田佳子は30歳を過ぎて、はじめて髪を染めた。美容室の鏡を見て、自分でも表情が明るくなったと満足した。

〈みんな、びっくりするかな?〉

 久しぶりにウキウキする気分だった。ところが数時間後、頭皮から首筋にかけてひどいかゆみが襲ってきた。しだいに、顔全体が腫れ上がってくる。

 翌日、深田は心配になって、美容室に電話をした。電話に出た若い美容師は、慌てた声で答えた。

「すぐ病院に行ってください」

 深田は、ますます不安になって尋ねた。

「病院? 原因はなんなの?」
「私たちではよくわかりません。アレルギーかもしれません」
「どういうこと?」
「薬液がお客様の体質に合わなかったとか……」

 相手のうろたえる様子が目に浮かんだ。

「あなた、美容師でしょ、責任をとってちょうだい」
「でも、メーカーさんからもとくに注意するようには言われていないんで……」

 完全に逃げ腰だ。

「じゃあ、誰が悪いのよ!」