このところの株価低迷のあおりを受け、大手銀行の株式含み益が急減している。22日の日経新聞の記事によると、大手銀行6グループ(三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、住友信託、中央三井トラスト)の含み益が、2007年3月末に比べて62%減の3兆5000億円になったという(第一生命経済研究所の試算)。

 90年代バブル崩壊後の銀行は、保有株式の株価下落で自己資本が減少し、これが、貸し渋りにつながって実体経済にも悪影響をもたらした。その後、3メガバンクは公的資金も完済し自己資本を回復させ、今のところ貸し出しも伸ばしていないから、今回の含み益減少は、自己資本及び本業にはまだ深刻な影響はないかもしれない。だが、株式含み損でかつてあれだけ酷い目に遭って懲りているにも関わらず、相変わらず多額の株式保有を続けている。

 むしろ近年は、体力に余裕が出てきたために、企業の株式所有を増やしていく方向に動いてきた。これは銀行経営のあり方を考えると、健全とは言いがたい。銀行のバランスシートは生き返ったが、経営体質そのものは改まっていないということだ。

銀行の株式保有は
利益相反を招く

 銀行が株を所有することの是非を考えたい。今回のサブプライム問題による株価急落を例にするまでもなく、株式には当然下落する可能性がある。銀行は株を所有することで、追加的なリスクを抱えていることはまちがいない。このリスクはどう正当化できるのか。銀行は株式運用会社ではないから、ビジネス上、別のメリットがあるのか。しかし、投資のリスクとたとえば融資ビジネスのメリットを天秤に掛ける構造は、株式保有と融資のコンフリクト(利益相反)そのものではないか。

 もともと、銀行が株式を保有すると、貸し出しをしている債権者としての地位と、株主としての地位を、都合よく使い分ける可能性があることは批判の対象であった。たとえば株主を犠牲にして債権を回収しようとするかもしれないし、株主の地位を使って圧力を掛けて、融資や預金の条件で儲けているとすると、他の株主の利益を侵害している。

 ここのところの株価の下がり方は急激だ。含み益の減少は、銀行以外にも影響が出そうだ。16日付けの日経ネットの記事によると、シャープとパイオニアの提携で、シャープが415億円で取得したパイオニア株14%が2割以上値下がりし、110億円の含み損になっているという。一方、パイオニアが取得したシャープ株にも20億円強の含み損が出ている。これらの会社以外にも、保有株式の値下がりでもっと多額の含み損を抱えている企業も多かろう。