ビジネスを取り巻く環境の変化はかってないほど速い。それはある意味、ビジネスチャンスが多いということでもある。チャンスを生かすために問われるのは柔軟性だ。業種の枠を超えた事業提携や他社との事業統合、社内での組織を超えたコラボレーションなど、既存のビジネス機能をつなぐことで、新たな付加価値が生み出されることが多い。しかし、その足かせになりかねない問題が潜んでいる。硬直化した基幹システムだ。

情報システム部門は
危険性に気づいている

 ビジネス環境の急速な変化に対応すべく、ITの世界も進化を続けている。今話題のクラウドもその一つだろう。新たな設備を用意することなく、当面必要な規模でITが活用できるクラウドは、新規ビジネスにも向いている。ビジネスの柔軟性に対応しようというIT側の変化は随所に見られ、スクラップ&ビルドが容易になるプログラムの開発手法も広がっている。変化への対応力、柔軟性は高まりつつある。

テックバイザージェイピー代表、弁理士
栗原 潔氏

くりはら・きよし
東京大学工学部卒業、米MIT計算機科学科修士課程修了。日本IBM、ガートナージャパンを経て2005年より現職。先進的ITおよび知的財産権に関するコンサルティングに従事。著書に『グリーンIT』(ソフトバンククリエイティブ)、訳書に『デジタルネイティブが世界を変える』『インテンション・エコノミー』(共に翔泳社)など。金沢工業大学客員教授。info@techvisor.jp

 しかし一方で、変化に対応できない可能性をはらんだ要素も残る。その代表が、メインフレームをはじめとする大型コンピュータを使った基幹システムだ。企業システムの現状に詳しいテックバイザージェイピー代表の栗原潔氏は「メインフレームを使っている企業の約6割は、『情報システムがビジネスの変化に迅速に対応できない』と考えています」と指摘する。ビジネスの根幹を支えるシステムだけに、その影響は大きい。

 企業システムの現場を預かる情報システム部門も、当然、この問題を承知している。わかっていながら手つかずになっているのだ。問題を認識しながら、なぜそのまま放置されているのか。栗原氏は「情報システム部門としては、下手に手を出したら大変なことになるという思いが強い」と指摘する。

 日々のビジネス活動を支え、とりあえず支障なく稼働しているシステムだけに、後回しになってしまうのはわかる。しかし、問題はそれだけではない。「ある部分を修正した場合に、他のどの部分に影響が出るのかわからない」(栗原氏)という悩みを抱え、簡単には修正することができないのである。それが、プログラムの“ブラックボックス化”だ。