東京証券取引所では、今年2月に設置した「現物市場の取引時間拡大に向けた研究会」によって、夜間取引を含めた取引時間の拡大に係る論点の整理が進められてきた。6月11日が研究会の最終回であったが、論点整理は進んだものの、明確な結論はでなかった模様である。

そもそも取引時間の拡大については2010年にも検討が行われ、2011年11月から昼休みの30分短縮による取引時間の拡大が行われたことは記憶に新しい。今回は、夜間取引の導入や夕方セッションが検討対象だった。

夕方取引などの時間延長は、海外でも2000年前後に取り組まれ、実際に延長した取引所もあるが、必ずしも成功という評価にはなっていないようだ。株式市場の改革は、株式市場が日本経済の成長、活性化にいかに役立つようにできるか、という観点から構想されるべきだろう。取引時間拡大がそうした目標に沿うものとなるのか考えてみたい。

成功とは言い難い
海外市場における取引時間拡大の現実

東証が検討進める<br />現物株式の取引時間拡大には課題多い<br />――大和総研専務 岡野 進おかの・すすむ
大和総研専務取締役調査本部長。1956年生まれ。80年東京大学教養学部基礎科学科卒業、同年4月大和證券入社、株式市場調査を担当、91年大和総研経済調査部、99年経済調査部長、2003年大和総研アメリカ社長、08年執行役員・資本市場調査本部長、11年常務執行役員、14年専務取締役調査本部長。主な著書に『株価革命とエクィティファイナンス』(東洋経済新報社、1990年)など。

 まず、海外市場では、どうなっているのかをみておくべきだろう。

「夜間取引」の実例があるかどうか海外事例を探してみたが、夜9時以降に取引セッションを設けて、現物株式の取引を行っている取引所は世界中に存在していない。一方、株価指数先物などデリバティブ取引については、夜間に行われているケースは少なくない。夜間の外国の市場変動やニュースへの対応は指数の先物取引などで行うのが一般的となっているようだ。日本でも大阪取引所では株価指数先物・オプション等の取引には深夜3時までのナイト・セッションがある。しかし、個別の現物株式は夜間にはほとんど取引される期待が生まれず、実際の市場の開設には至っていないのが海外でも現実である。

「夕方取引」や「取引時間の延長」はどうだろうか?これについては、海外には夕方や昼間の時間帯における取引時間の拡大を図った取引所が、いくつかあるのは事実だ。ただし、多くのケースで売買高の明確な拡大につながらず、成功したとは言い難い。例えば、フランクフルトのドイツ取引所では、2000年6月に取引終了時刻を17:30から20:00に2時間半延長したものの、3年後の2003年11月には、電子システム取引(クセトラ)の部分については、取引終了時刻を17:30に戻す結果になっている。そのほか、スイスやノルウェーの取引所でも一旦取引時間を延長したものの、再び短縮するという例があった。