テクノロジーが台頭する
今年のカンヌ出品作

 世界最大の広告マーケティング業界の祭典、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)が6月15日から21日の7日間にわたって、今年もフランス南部のカンヌで開催されました。私は2010年から毎年参加しています。

 今年の最も大きなニュースの一つは、新たに「ライオンズヘルス(Lions Health)」が別日程(6月13日・14日)で新設されたこと、そのヘルス&ウェルネス(Health&Wellness)部門で、日本の医療法人葵鐘会ベルネットの「MOTHER BOOK(マザーブック)」が初代グランプリを獲得したことでしょう。

 女性の人生における最も大切な出来事の一つである妊娠・出産を、より貴重な経験として記録するためのツールを提供したいという気持ちを「40週=40ページで構成される本」という形で表現した点が、高い評価を受けました。

 さて、本題のクリエイティビティ・フェスティバルですが、今年は全体的に「表現手段としてのテクノロジーが前面に立ち、クリエイティブの領域に深く入り込んできた」という印象を受けました。

 例えばホンダは、1989年に鈴鹿サーキットで行われたF1日本グランプリ予選でアイルトン・セナが当時の世界最速ラップを出した際のデータを解析し、セナの最速ラップをエンジン音と光の演出で再現した「Sound of Honda」を出品。チタニウム部門でグランプリを獲得しました。

 ブリティッシュ・エアウェイズは、ピカデリー広場のビルに設置された大きなディスプレイの上空をブリティッシュ・エアウェイズ機が通過すると、子どもが飛行機の飛ぶ方向を指差す映像と、便名、行き先がリアルタイムでディスプレイに映し出される「MAGIC OF FLIYNG」という作品を発表しました。これも、ダイレクト部門でグランプリ受賞作品となったのです。

 この二つの作品は、テクノロジーとクリエイティブの高度な融合という意味で、今年のカンヌのトレンドを象徴した作品といえるでしょう。