新製品開発では、既存の要素技術の組み合わせで済む場合と、新しく要素技術自体を開発しなければいけない場合がある。

 例えば、薄型テレビの新製品開発では、既存の部品を組み合わせて新製品を作ることもできるが、有機ELなどの新たな技術を盛り込むには、その要素技術を開発することが必要となる。要素技術開発の難度が高いほど、また開発する必要のある要素技術が多いほど、新製品開発は難しくなるのだが、それを甘く見積もって失敗することが意外と多い。

 各要素技術の開発には高度な専門性が要求され、他の分野の人が口を挟みにくいところにその原因の一端がある。「要素技術マッピング」は、それをわかりやすく図解し、ボトルネック解消に役立てようという手法である。

[事例]ある本社研究所

 ある電機メーカーの本社研究所で、新しい表示デバイスの開発を進めていた。これは、従来の表示デバイスをしのぐ優れた性能を発揮することが期待されていたが、その開発には4つの「独立した要素技術」(図中のA~D)の開発が必要であった。

図

 「独立した要素技術」とは、例えば、微細加工技術と回路設計技術というように相互に依存性のないものであるため、Aが開発されたからといって、B~Dができることにはならないものを指す(確率論では独立事象)。当然A~Dという要素技術は、専門性の違うグループによって開発が進められていた。各グループのリーダーは自信満々で、必ず期日までに目標を達成してみせるといっていたのだが、結局、計画は大幅に遅れてしまった。

 新しくこの開発企画室に配属された安田課長は、各グループのメンバーに集まってもらい、新たな目標期日までに技術が完成する可能性を確率で表わす試みをした。