苛烈な競争環境で成功するためには、相手を蹴落としてでも自分の言い分を通す米国の企業社会。その職場いじめのメカニズムは、世界にばら撒かれていると専門家は警鐘を鳴らす。

アメリカが世界にばら撒く<br />“職場いじめ”の恐るべきメカニズム
ゲリー・ナミエ(Gary Namie)
1997年、夫人のルース・ナミエと共に職場いじめ問題研究所(Workplace Bullying Institute)の前身となる組織を設立。職場の健康に関する調査やコンサルティング、職場ルールの構築を手掛けている。1990年代末にサンフランシスコ地域で職場いじめのヘルプライン(駆け込み電話)を設立したのが話題に。夫人との共著に『BullyProof Yourself At Work!』『The Bully At Work』等がある。法制化を働きかけているいじめ防止法案は、現在17州に提出されている。

 職場いじめ(Workplace bullying)は、実はハラスメント(セクハラやパワハラ等)の4倍も多発している深刻な問題だ。

 2007年に7740人を対象に行われた全米調査によると、職場いじめを現在体験している人は13%、以前体験したことがある人は24%、そして12%は自分では体験していないが、目撃したことがあると答えている。

 いじめが多いのは、ハラスメントには法律による罰則があるのに、いじめにはないためだ。われわれは今、職場でのいじめを規制するための法制化を目指して活動しているところだ。

 いじめの対象になった社員は健康をも害するという点で、火急の対応を要している。いじめは、ちょっとした意地悪で起こるものからサディスティックなものまでレベルはいろいろだが、世界の企業がアメリカ化するにしたがって一緒に輸出されている。

 四半期ごとの業績を見せつけ、成果主義に重きを置くアメリカでは、超競争的な環境の中で成功するためには、相手を蹴落としてでも言い分を通すのが当たり前だからだ。

 また上司は、何事も部下に高圧的に強要すべしという勘違いがまかり通っている。いじめの72%は上司から部下に対するものであるという統計が、それを物語る。

 18%は同僚が相手、部下から上司に対しても数少ないがある。男女比で言えば、60%のいじめが男性によるもの、40%が女性によるもので、女性のいじめは女性に向けられることが多いという調査結果は、かなり注目を集めた。

 私は、いじめをナルシズムの一種と見ている。