投資ファンドのカレイド・ホールディングスの出資を受けて経営再建中だったレナウン。業績悪化を背景に、渡辺省三会長と岡康久社長の両首脳が辞任する異例の人事発表に追い込まれた。

 2008年2月期の業績は、売上高が1800億円(期初予想は1820億円)、営業収益は24億円の赤字(期初予想は30億円の黒字)に下方修正し、二期連続の最終赤字が確実になった。10年2月期を最終年度とする中期経営計画(売上高2100億円、経常利益85億円)は初年度から大幅な未達に陥った。

 もちろん、アパレル業界全体も厳しい。残暑などの天候不順の影響で、業界の“勝ち組”といわれてきたオンワードホールディングスでさえ、第3四半期は営業減益を余儀なくされている。

 だが、レナウン固有の大問題もある。風土改革がいっこうに進まなかったことだ。八年間陣頭指揮を執ってきた渡辺会長(旧レナウン社長で、2004年にダーバンとの統合後、会長に就任)は管理畑出身という経験を生かし、子ども服事業からの撤退などのリストラを行なった。その一方、オンワードで婦人服事業を伸ばした加藤嘉久元専務を副社長に招聘し、婦人服の強化にも出た。

 それでもなお、業界内での評価は、「販売のおっとり体質は変わらない」(百貨店婦人服担当)と手厳しい。売れ筋商品の見極めが明暗を分ける売り場にあって、売れ筋の生産が追いつかないというお粗末すらあった。

 社長となる中村実取締役は、「アクアスキュータム(AQ)」などの営業出身。4月中旬までに抜本的な経営改革案を発表する方針だ。

 1990年に200億円で買収したAQは、成長の柱の一つに位置づけられているが、業界内には「AQがレナウンの重荷になっている」との見方が強い。

 2007年2月にレナウンはAQに65億円という“追加投資”を行ない、欧米や日本での売り上げ増を狙ってきたが、「ブランド戦略の変更によって、既存顧客を逃したうえ、新規顧客も取り込めないという悪循環に陥っている」(大手百貨店)。今期も赤字が予想以上にふくれ上がっている。

 今回の首脳交代は、「カレイドの勧告があったわけではない」(レナウン)としているが、再建が進まなければ虎の子のAQ売却も視野に入ってくる。業績のよかった婦人服のレリアンもすでに連結子会社化しており、レナウンには選択肢も時間も、わずかしか残されていない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 大坪稚子)