今再び注目される19世紀の芸術家、ウィリアム・モリス。彼が志向したユートピアの現代版“エコトピア”(環境調和型社会)での個人生活を実現している人が、京都嵐山にいる。伊藤忠商事などでの仕事を続けながら自給自足の基盤を築いてきた。その方法を『京都嵐山 エコトピアだより─自然循環型生活のすすめ』(小学館)で著した森孝之氏に、エコライフの効用と実践ポイントを聞いた。

森孝之
森孝之(もり たかゆき)
1944年から京都嵐山に定住。伊藤忠商事を経て、ワールド取締役。86年に同社を退職して以降、講演や執筆などを通して、循環型生活の普及を訴え続けている。92年に大垣女子短期大学デザイン美術科教授、2000年に同大学学長就任。現在は、大阪成蹊大学非常勤講師として、環境デザインの教鞭を執る。主な著書に『京都嵐山 エコトピアだより』(小学館)、『「想い」を売る会社』(日本経済新聞出版社)、『人と地球に優しい企業』(講談社)など。

─著書のタイトルにある「エコトピア」は、どういう意味ですか。

 エコロジカル(環境保全・調和の)とユートピア(理想郷)という二つの言葉を組み合わせたもので、アーネスト・カレンバックという作家の造語です。それに、19世紀の英国の芸術家・思想家のウィリアム・モリスが著した『ユートピアだより』を文字って、タイトル付けしました。 「今日におけるユートピアは、エコロジカルなものである」という考えに基づいています。

 カレンバック氏の知人の学者、内藤正明・佛教大学教授(京都大学名誉教授)は、そうした考え方を授業で教えているそうですが、我が家を訪れて、「この考え方を実践している」と言ってくれました。時々ゼミの学生を連れてきて、「一つのモデルケース」として見せています。

 ソフトウエア大手、アシストのビル・トッテン会長も、当家に来て、「こういう生活をしたいと思いながらも同時に、難しいだろうなと考えていたが、実践者を見て自信がわいた」と共感してくれました。

─具体的には、サブタイトルにある「自然循環型生活」ですね。

 果樹や薬木を庭に植え、菜園で数十種類の野菜を作り、自給自足しています。生ゴミや落ち葉は堆肥とします。雨水、し尿、台所排水はできるだけ活用し、活用し切れない分は下水道に流しています。