リーダーにできる行動は
パフォーマンスとメンテナンスだけ

前回は、リーダーシップを発揮するための土壌づくりについて解説した。では、リーダーシップを発揮できる土壌ができたらどうするか。ここから先は一気に行きたいところであるが、実は、リーダーにはできることが意外に限られているものなのだ。

 リーダーができることは大きく分けると2つしかない。

 図は、三隅二不二先生(九州大学)のPM理論に基づく図だ。

暑苦しい上司と一見何もやらない上司 <br />それぞれのリーダーが最も活躍できる組織の特徴

 Pとはパフォーマンスで、成果を求めて部下を厳しく導くことを意味する。目標を決め、スケジュールを決め、やるべき仕事を決める。それで「行けー!」とお尻を叩く。これをパフォーマンス行動=P行動という。

 もう1つは、組織の和を保つ行動。これをメンテナンス行動=M行動という。組織メンテナンスである。具体的に言うと、一人ひとりの心の状態に気を配り、一人ひとりのやる気を見る。部下同士の人間関係がしっかりと構築できているかどうかを小まめにチェックする。そうすることで部下たちがその組織に安心していられるようにする行動を指す。

 こうしたP行動とM行動がリーダーのできる大きな2つの行動だといわれている。どんな学者が研究してもだいたい同じ答えが出るので、今や不変の2軸といわれるようになった。

 図を見ると、PMという形で、両方ができる人間が万能選手のように思えるかもしれない。当然そうなのだが、使い分けが必要で、PとMを同時に使うのがいいとは限らない。組織の状況に合わせて、自分のリーダーシップスタイルを使い分けられることが大切なのだ。

 たとえば、すごく和気藹々として皆、仲がいいけど、ちょっとぬるま湯すぎて、それで成績が落ちている、そういうぐずぐずの組織だったら、Pモードを優先させたほうがいい。

 そんな時に、「皆、元気か?」などと気を配っても、それは意味がない。たいして頑張っていないのだから当然元気だろう。

 一方、抜きつ抜かれつで切磋琢磨と言えば聞こえがいいけど、足を引っ張る奴も出てくる。壊れる奴も出てくるようなところで「行け、お前ら!」とやったら、それこそ死人が出るかもしれない。だから、そこは当然、メンテナンス行動が必要になる。「ここらで一度立ち止まって、話し合おう」と言うのがいい。要するに時に応じて、PかMかを使い分ける必要がある。