あなたの会社には「経営に資する研修」はありますか?

新入社員研修に始まり、スキルアップ研修、階層別研修、コンプライアンス研修、マネジャー向け研修…など、企業内ではさまざまな研修が企画、実施されている。だが、果たして社員たちはほんとうに学べているだろうか?そして、研修で学んだことを職場・現場での成果につなげることができているだろうか?

企業内で自社にフィットした社内研修を企画立案し、実施・評価していこうとする方のために書かれた研修開発の入門書、「研修開発入門」会社で「教える」、競争優位を「つくる」から5つのテーマに絞って、研修開発担当者が知っておきたい基本的な考え方を紹介する。(構成・井上佐保子)

「入社3年目社員向け研修の企画立案と実施」を任された人材開発部のA子は、研修の企画を見直すため、3年目社員とその上司へのインタビューやアンケートを実施した。すると、3年目社員には、キャリアの先行きが見えない不安があり、そのためにモチベーションダウンが起きやすく、人事部によると離職につながるケースも出てきているということが分かった。

「私も入社3年目の頃は、仕事はそこそこできるようになってきたものの、どんどん成長する後輩たちの姿に焦りを感じたり、この先もずっとこの支店でこの仕事をしていくのかな、と漠然と不安を感じたりしていたような気がするわ。3年目という節目に、それまでの自分を振り返ったり、その先のキャリアについて考えたりして、モチベーションアップできる研修ができるといいのだけれど…」

  そこで、A子は上司である人材開発部長に例年行われてきた研修カリキュラムを見直し、「キャリア開発」を目的とした新たなプログラムを追加導入することを提案した。すると、

「それはいいアイディアだと思う。だが、残念ながら今年はこれ以上の予算をかけられないし、研修講師を新たに手配することもできない。そのプログラムの講師は君がやったらどうだ?」と部長からまさかの逆提案。

「えっ!私が研修講師に!?ム、無理ですよ!」

「君は以前いた部署で、勉強会を開いていたそうじゃないか。とても評判が良かった、と聞いている。研修でも君の経験を話して、若手社員たちを元気づけてやってくれないか」

 研修講師として自らも登壇することとなってしまったA子。これまで、非公式の社内勉強会を主催したことはあったが、研修をどうやってデザインし、講師としてどう振る舞えばよいのかは、皆目見当がつかなかった。「ただ私の経験談を話すだけでは、単なる講演会。きっとほとんどの参加者が寝る、『居眠り研修』になるのがオチだわ。参加者にとって有意義な研修にするには、どうしたらいいんだろう?」

 A子はバッグの中からおもむろに「研修開発入門」を取り出した。「えーと、なになに?研修をデザインする際には、注意を払うべき『学びの原理・原則』があります…か」