今夏以降、カンボジアで銀行を設立する動きが出てきた。

 パチンコホール経営の最大手であるマルハンは5月22日、85%の出資で「マルハンジャパン銀行(資本金2500万ドル)」を首都プノンペンに設立。「同国で18番目の商業銀行で、日本企業からの出資を受けた銀行としては初めて」(マルハン)という。

 国内のパチンコホール経営会社は、大手のダイエーをはじめ多くが経営破綻。一方で、パチンコの出玉を換金することが法律的にグレーゾーンゆえ、大手といえども株式上場ができないなど、経営環境は厳しい。こうした中、同社ではマカオでカジノを含むテーマパーク開発を進める企業の関連会社に出資するなど、新規分野への参入を模索してきた。

 パチンコホールと銀行に共通点はなさそうに見えるが、同社では「(パチンコホール経営で)永年培ってきた『徹底した顧客サービス』を銀行業界に持ち込むことで差別化を図る」という。

 開業当日に行なわれたセレモニーでは、同国の経済財政大臣、中央銀行総裁、駐カンボジア日本国特命全権大使といったVIPが参列し、同行への期待の高さを示した。

 今後は「個人向けローンやリース、保険販売などに加え、中小企業向けの小口融資を行なっていく予定」(マルハン)という。

 さらに9月1日にはSBIホールディングスが40%の出資を行ない、韓国の現代スイスグループと共同出資で「プノンペン商業銀行(資本金1500万ドル)」を設立した。

 当初は預金運用業務から始め、その後に不動産関連のプロジェクトファイナンス、融資を行なう予定という。

 カンボジアが注目されつつある理由の一つは、昨年6月に締結された日・カンボジア投資協定である。規制や税制などの投資環境面において、両国が、自国企業と同等にあつかうことが定められた。例えば、日本企業がカンボジアに進出した際、原料の現地調達や技術移転などの義務はなく、日本への送金も規制されない。

 同国では来年下期にも証券取引所が開設される予定であり、SBIホールディングスでは「株式公開を狙う企業へのコンサルティングも検討している」という。

 カンボジアは2004年に世界貿易機関(WTO)に加盟以降、年率10%前後の経済成長を続けており、近年では中国、韓国からの投資が過熱している。さらに長年続いた内戦の影響で、石油やボーキサイトなどの鉱物資源が手つかずのままであり、今後の資源開発にも注目が集まっている。こうした中、金融業に限らず、カンボジアへの関心が高まる可能性もありそうだ。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 松本裕樹)