都内に住む50代のある男性は、新年早々、2度目のエコポイント申請手続きを行った。「昨年は、家族用にハードディスク内蔵の大型テレビを購入したが、今回は自分用。前回分のエコポイントを使ったので、かなり安く済ませることができた」という。

 2010年1月18日、経済産業省は、昨年12月末時点の、エコポイントの活用によるグリーン家電普及促進事業にかかる家電の販売状況、およびグリーン家電普及促進事業の実施状況について発表した。

 個人申請実施状況は、申請受付数626万6193件、エコポイント発行数556万6186のうちテレビが約3分の2の、376万4024件を占めた(いずれも7月からの累計)。

エコポイントは消費活性化の起爆剤になるか?

 年齢別のエコポイント発行件数を見ると、50代以上の層が全体の3分の2近くを占めており、育ち盛りの子どもを抱え日々のやりくりと戦っている30代、40代は少数派にとどまった。

そもそもエコポイントが狙いとしているのは、(1)地球温暖化対策の推進、(2)経済の活性化、(3)地上デジタル放送対応の普及促進、の3つである。

それぞれについて、現状どういうことになっているのかを考えてみよう。

 まず(1)でいえば、「省エネ・環境配慮製品」との交換件数は、個人申請の場合、全交換数の0.13%にすぎない。商品交換数のトップは「商品券・プリペイドカード」(92.4%)。その内訳上位は、クレジット系商品券、流通系商品券、生活関連券となっている。

 次に(2)としては、経済産業省のデータによれば、テレビ、エアコン、冷蔵庫の3品目の、エコポイント開始時からの合計売上(昨年5~12月)は、前年同期比約120%になっている。

エコポイントは消費活性化の起爆剤になるか?

 総務省の「家計消費状況調査」をもとに、家計のサイフから、同3品目(分類項目は、デジタル放送チューナー内蔵テレビ、エアコンディショナ、冷蔵庫)に対する支出額を同じように比較したところ(こちらのデータは5~11月)、前年同期比は115.6%であり、これらから、経済の活性化という視点からは、一定の成果を挙げていると考えられる。ただし、家計消費全体で見た場合は、前年並み(100.1%)の水準にとどまっており、エコポイントの導入がどこまで家計のサイフのひもを緩めたのかは定かではない。

 大型家電・AV機器の販売にも力を入れるあるHCでは「デジタル放送チューナー内蔵テレビ、エアコンの動きはよかったようだが、売場からは、エコポイントによる販促効果という声は上がってきていない。テレビ販売が好調なのは、一昨年からの地デジ効果によるものではないか」という見方をしている。

 最後に(3)地上デジタル放送対応の普及促進について。経済産業省資料によれば、テレビの12月の売上は、数量ベースで約164%、金額ベースで約141%(いずれも対前年同期比)だったという。家計消費状況調査から検証すると、5~11月までの、デジタル放送チューナー内蔵テレビへの支出は前年同期比131.0%になっており、エコポイント制度が始まった5月以降は、すべての月で前年支出額を上回った。

 冒頭で紹介した50代男性のように、エコポイントに刺激され、地デジ対応テレビを複数台購入したというケースがどれだけあるかはわからない。しかし象徴的なのは、彼は、1台目も2台目も、連日のようにインターネットで実勢価格をチェックし、納得のいく価格を確認してから、購入を決めていたことだ。エコポイントという政策だけで、サイフのひもを緩めたわけではないのである。サイフのひもを緩めるにも、慎重居士。現在の消費者心理を表しているのかもしれない。


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