2014年8月29日、政府は「子供の貧困対策に関する大綱」を発表した。日本の子どもの貧困率は、先進国では最悪レベルとなりつつある。放置すれば、さらなる少子化の進行が促進される可能性もある。もちろん貧困状態にある子どもたちは、二度とない子ども時代に数多くの機会を奪われる。

大綱の内容は、子どもの貧困問題を解決すると期待できるものだろうか? 子どもの貧困問題に関わる人々は、大綱のもと、この「待ったなし」の問題に対して何を始めようとしているだろうか?

「子供の貧困対策に関する大綱」は出たけれど?

 2014年8月29日、「子供の貧困対策に関する大綱 ~ 全ての子供たちが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指して ~(以下、子供の貧困対策大綱)」が閣議決定され、公開された。

 2012年、子どもの貧困率は過去最悪の16.3%に達した。特に、ひとり親家庭の貧困率は54.6%にも達していた。いずれも、過去の調査において最悪の結果である。

 このため2013年6月、超党派の協力によって「子どもの貧困対策の推進に関する法律(子どもの貧困対策法)」が成立し、2014年1月より施行されている。現在の課題は、どのように予算を確保し、誰がどのように実行し、どのような結果へと結びつけるかにある。発表された大綱には、具体的に実行可能なヴィジョンを示すことが期待されていた。もちろん「具体的に実行可能」であるためには、予算が確保されなくてはならない。

 今回の大綱において、予算が確保されている事業と概算要求が予定されている金額は、内閣府・文科省・厚労省の資料「大綱を踏まえた平成27年概算要求について」で確認することができる。その内容は、

1.教育の支援(合計 3339.7億円)
・学校を子供の貧困対策のプラットフォームとして位置づけ(スクールソーシャルワーカーの配置拡充(現在の1500人→5年後に1万人)など)(13.2億円)
・高校生等奨学給付金の拡充(116億円)
・より柔軟な『所得連動返還型奨学金制度』の導入に向けた対応の加速(対象は大学等奨学金事業、3196億円)
・貧困の連鎖を防止するための学習支援の推進(合計11.8億円以上)
・学習が遅れがちな中学生を対象とした学習支援(2.7億円)

2.保護者への就労の支援(合計 2.3億円)
・保護者の学び直しの支援(高認試験対策など) (2.3億円)

3.施策の推進体制(合計 2億円)
・官公民の連携プロジェクト・国民運動の展開(「子供の夢応援プロジェクト(仮称)」)(2億円)

 合計で3344億円、大学等奨学金を除くと148億円。子どもの貧困問題に対する政府の認識は、このなんとも「セコい」感じのする予算に示されている通りなのだろうか?