“日中首脳会談”は開かれるのだろうか?

 私が知る限り、現段階では決まっていない。

「盛り上がる世論を後ろ盾に、無条件で首脳会談の開催を希求する日本側」と「開催には条件が必要だと断固主張し、世論はまったく盛り上がっていない中国側」。これが会談に向けた日中両国の構図であろう。中国側が求める「条件」とは、(1)日本の首相が靖国神社に参拝しないこと、(2)尖閣諸島に領有権問題が存在することを認めること、の2つだと私は認識している。

「無条件」VS「有条件」の溝は深く、日中外交当局がこの溝をどう埋めていくか、そのためにどのような協議をこれから2ヵ月の間で重ねていくかが、“日中首脳会談”の開催に向けた鍵になるであろう。私自身は、この溝そのものを棚上げしてしまうようなダイナミックな交渉と知恵が日中両国には求められていると考えている。

「点」の議論で暴走している
会談を懇願する姿は適切か?

 前後編の最後に、日中関係の現状と展望に関する愚見を述べる。

 昨今の日中世論を俯瞰していると、“日中首脳会談は実現するのか?”というフレーズが独り歩きしているように感じる。実現するかしないかのみに焦点が集まり、“日中関係の発展のためには何が必要か?”という「面」の議論がなされないまま“日中首脳会談は実現するか?”という「点」の議論だけが暴走しているように見える。

「自分からここまで赤裸々に日中首脳会談をやりたいと懇願する姿勢は、かえって日本という国を小さく見せてしまう。自らの戦略と国益に真の自信を持っている国家はそんなことを自ら口に出さない。相手に攻め込まれるだけだ。外交カードを失うだけだ。弱みを握られるだけだ。しかも、相手は中国だ。中国という国家に向き合うだけの戦略と覚悟が日本には欠けていると思う」

 ワシントンDC在住の東アジア専門家が私にこう語った。

 私自身は、日中両国は首脳会談の早期実現に向けて双方向の努力をすべきだと考える。

「両国首脳が面と向かって話をすることは、両国が直面するクリティカルな問題をトップレベルで議論できるだけでなく、両国の市場や世論に“友好”という名のシグナルを発することにもつながる」

 北京で過ごした学部生時代、日中関係を研究する一人の先輩から私はそう教わった。