週刊ダイヤモンド 野口悠紀雄・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授は、2007年4月から、グーグルの無料電子メールサービス「Gメール」を使っているそうです。

 「Gメールは、80年代のワードプロセッサー、90年代のインターネット、そして21世紀初頭に登場したグーグルのインターネット検索サービスに匹敵する"大変化"だ」というのが、野口教授の見立てです。

 野口教授と言えば、ベストセラーとなった『「超」整理法』で、紙ベースの情報の効率的な整理法を説きましたが、あれから15年前、デジタル時代の超「超」整理法として、グーグルを活用することを提唱しています。

 ところが日本の大企業は、重要な会社の情報が他社の管理下に置かれることには抵抗感を覚え、「グーグル・フォビア」(グーグル恐怖症)というべき"杞憂"によって、この安価で便利な環境を活用し切れていません。

 逆に、米国の中小企業は、積極的にGメールや「Google Apps」(グーグルの企業向けサービス)を導入して、仕事の生産性を上げています。野口教授は、日本でも「中小企業こそ、グーグルが実現する"デジタルオフィス"を使い倒せ」と主張します。

 インターネット環境が整い、グーグルのように無料か、きわめて安価な情報環境が個人や中小企業も手にすることができるようになりました。さらに、現在、「SaaS」(Softwareas a Service)や「ASP」(Application Service Provider)、「クラウドコンピューティング」と呼ばれる軽装備のIT技術も急速に普及しています。

 この種のサービスは、従来は大企業が多額の投資をして作りあげていたようなITサービスを、インターネット上に置いたサーバから、必要に応じて利用することを指します。中小企業でも、パソコンさえあれば。社内にシステムを管理する人員も無用で、安価にITの恩恵を受けられるわけです。

 今回の特集では、これらの無料や安価なツールを活用した情報武装を、その象徴である企業名をとって「グーグル化」と呼びました。

 「営業のカリスマ」と呼ばれる経営コンサルタントの神田昌典氏は、ウェブを駆使したマーケティングの威力に早くから気づき、推奨してきた1人です。その神田氏も、特集のなかで「2008年は、革命が第2ステージに入る重大な年」として「ITリテラシーを積み重ねた企業とそうでない企業の差は、どんどん開いていく」と警告しています。

 こうした背景から、小さな企業が大企業と伍していくためのIT導入や活用術を、豊富な事例とともに紹介したのが今週の第一特集です。

 また「巻頭緊急特集」としては、世界の株式市場に激震をもたらした米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻問題を採り上げます。「リーマンショック」の余波はどこまで広がるのか。今週も読みどころ満載です。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 深澤 献)