駅のトイレで見かける「いつもきれいにご利用いただきありがとうございます」という張り紙は、文字通りに読むと意味不明なものになってしまう。
「はい、はい。『きれいに使え!』ってことね」。そういってトイレを利用してくれる人を前提にした貼り紙は、とても日本的な光景といえる。
しかし、法律の世界では、主語と述語をハッキリさせることがとても大切だ。
それは、逆にいえば主語と述語をハッキリさせることで文章の論理性を増すことができるということ。
文章の論理性を高めるテクニックを、条文から学び取ろう。

法律は主語と述語がハッキリしている

 日本語の特徴はいくつかありますが、多くの人が指摘するのは主語があいまいなことです。なんとなく主語がはっきりしない方が「やんわり」とした印象の文章になります。

 やんわりするといえば、文章の末尾もそうです。上から目線的な言葉が嫌われるからでしょう。近頃では、主語以上に曖昧です。

 たとえば、駅のトイレには「気持ちよく使いましょう!」とあります。これなど、施設管理者が利用者に呼びかけているのですが、誰がどうしなければならないのか文法的にはわかりません。

 さらに「いつもきれいにご利用いただきありがとうございます」という掲示の意味などは、文字通り読むと意味不明なものとなってしまいます。「はい、はい。『きれいに使え!』ってことね」。そういってトイレを利用してくれる人を前提にした貼り紙は、とても日本的な光景なのでしょう。

 こうした情緒的な言葉は人間関係に波風を立てない工夫かもしれません。しかし、法律を考える上でこれは命取りです。

 法律では「誰が何をすべきなのか」ということがとても大切です。法律の規定が向けられている人は誰なのか、そして、その人がどのように行動することが求められているのかがハッキリしないとルールを示したことにならないからです。

 こうした視点から、法律では主語と末尾をハッキリさせることにとても神経を使っています。