ネットビジネスを成功させるキーワードとして、「ユーザーファースト」という言葉を耳にすることが多くなってきた。これまでも日本企業の多くが、「お客さま第一」を経営方針の筆頭に掲げてきたが、今、ネット企業が取り組むユーザーファーストは、インターネット上でユーザー(利用者)が持つようになった新しい力を意識したものだ。
日本最大手のポータルサイトYahoo! JAPANを運営するヤフーのCS(カスタマーサポート)における、ユーザーファーストを実践するための先進の取り組みを紹介する。

ユーザーファーストは
スマデバ時代のキーワード

 インターネット技術の進化とともに、商品・サービスの評価を誰もが気軽に発信するようになった。それらのクチコミが、売り上げを左右することもある。企業とユーザーとのコミュニケーションはダイレクト(直接的)、かつインタラクティブ(双方向的)になり、ユーザーは企業への改革提案者、製品・サービスの企画立案者という役割を果たすようにもなったのである。

 しかも、企業のCSへの要求レベルは高度化している。PCを使ったメール問い合わせの場合、24時間以内の返信というのが、一つの目安になっていた。しかしいまや、企業には、スマートフォン、タブレットなど、スマートデバイス経由の問い合わせのほうが多く寄せられる。そしてこれら「スマデバユーザー」は、1時間以内に回答が来ないと、満足度が急落してしまうのだ。

 ネット企業はいずれも、ユーザーの新しい力を意識したアプローチに工夫を凝らしている。ということは、Webをマーケティング手段に用いているすべての企業においても、「ユーザーファースト」は重要なキーワードと言うことができる。

ヤフー
システム統括本部 CS本部
本部長
市川 久浩氏

 Yahoo! JAPANでも、ユーザーファーストを標榜してきた。

「当社は売り上げの約7割を広告収入が占めています。つまり、集客力こそがビジネスの基本であり、お客さまから長期的に支持されるユーザーファーストのサイクルを作ることが、収益の流れにつながるのです」と、システム統括本部CS本部本部長の市川久浩氏は語る。1ヵ月594億ページビュー(2014年4~6月平均)を誇るYahoo! JAPAN。この集客力の長期的な維持・拡大を目指す戦略が、ユーザーファーストなのである。

 ヤフーは全社を挙げて、ユーザーファーストに取り組んでいる。特に、ユーザー対応の中核を担うCS部門は、グループ会社の再編成を含めた大胆な改革をいち早く行った(図1)。さらに業務を支えるシステムも、「シングルプラットフォーム」をテーマに、根本的な再構築をしたのである。

図1 ヤフーのCS部門が目指した三つの解決力の向上
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 同社CS部門は、メール問い合わせだけでも月12万件に対応しなければならない。従来は、必要に応じてアプリケーションを購入したり、社内開発したりして、業務をシステム化してきた。その結果、複数のシステムが個別に動く環境となり、ユーザー情報やナレッジがシステム間で分散し、スムーズなユーザー対応の妨げになっていた。

 そこで、CS対応のすべてのプロセスをカバーできる「シングルプラットフォーム」を構築することを決断したのだ。


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