北アフリカ・アルジェリアの工事現場に日本から送った物資も、欧州からの資材も届かない。現地政府関係者から賄賂を要求されて、荷が足止めされていた──。

現地政府が国際仲裁を拒否 <br />鹿島が嵌る海外事業の罠鹿島の業績は改善しているが、アルジェリアの一件が足を引っ張りかねない
Photo by Satoru Okada

 鹿島や大成建設、ハザマ(現安藤ハザマ)、西松建設と伊藤忠商事の5社で構成するジョイントベンチャー(JV)が2006年にアルジェリア政府から受注した、東西約1200キロメートルのうち約400キロメートルの高速道路建設工事。総工費5400億円のうち1000億円が未払いになっている問題が、ついに暗礁に乗り上げた。JVは6月、支払いを求めて、フランスにある国際仲裁裁判所に対しアルジェリア政府との仲裁を申し立てたが、同国政府が拒否する意向を伝えてきたのだ。

 この工事では今年1月、一連の工事で鹿島が手掛けた高速道路のトンネルが崩落。日本側の関係者によると、鹿島はアルジェリア政府に対し事故の前から再三、トンネル内の鉄筋の補強が必要だと訴えていたが、アルジェリア側が聞き入れなかった。

 10年に完成予定だった工事は延期を重ね、現在も進捗率80%で止まったまま。採算悪化で鹿島や大成らがこれまで損失処理した額は数百億円に上る。

 ゼネコンが手掛ける海外の大型案件は難航するケースが多い。特に新興国では建造物のスペックや工事の安全性が国内ほどは求められない上、現地の技術者の習熟度が低く、契約の手法や賄賂など現地の商習慣にも不慣れだ。そのため、不利な条件で工事を請け負うケースが多いからだ。