今回ご紹介するのは、『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』です。100円ノートを使ったカンタンな情報整理術が支持を集め、シリーズ累計50万部のベストセラーになりました。その一部をご紹介します。

半世紀にわたって
進化してきた情報整理術

徹底的に簡素化された情報整理術で<br />ノート術ブームを巻き起こしたベストセラー奥野宣之著『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』ノートのようなデザイン。厚そうに見えますが、やさしい文体なのであっという間に読めます。

 情報整理術については、梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書、1969)以来、この半世紀のあいだに多くのアイデアが提供されています。本書はもっとも新しい方法論の一つです。すべての情報を1冊のノートに書き込んだり、他の紙情報を貼り付けたりして、時間順に、つまり分類せずにひたすら順番にページを進めるシンプルな技術を教えてくれます。

 時間順に情報をファイルして並べ、検索キーも日時(時間)に限る方法としては、野口悠紀雄『「超」整理法』(中公新書、1993)があります。「超」整理法のポイントは、紙袋にまとまった情報を放り込み、時間順に並べる「押出しファイリング」でした。限られたスペースの棚から押し出される古い袋ファイルは時間順に捨てちゃうわけです。

 山根一眞『スーパー書斎の仕事術』(ビジネス・アスキー、1985)は、紙袋に情報を入れ、表書きしたタイトルの五十音順で検索できるようにする「袋ファイルシステム」でした。五十音順配列が山根式のポイントです。80年代に流行したシステム手帳にすべての情報を織り込んでいく、山根一眞『スーパー手帳の仕事術』(ダイヤモンド社、1986)にもずいぶん啓発されました。

 本書は野口式や山根式をさらに徹底的に簡素化し、ごく普通のノートにすべての情報を時間順に織り込んでいく方法を提示します。「いつでもどこでも『1冊だけ』」と題した章で著者はこう書いています。

 仕事や日常生活で扱う情報は、何でもこのノートに入れます。/具体的に、どんなものを入れるのか、僕が今使っているノートをめくってみると次のような情報が入っていました。

・業務日誌や日記としてのメモ
・打ち合わせや取材したことを記したメモ
・セミナーのレジメや内容メモ
・仕事で使った資料の切り抜き
・取引先からもらった手紙やハガキ
・アイデアを書いたメモ用紙
・新聞や雑誌の切り抜き
・本をコピーしたもの
・映画やテレビの感想メモ
・もらった名刺
・その他の紙のもの……観光パンフレット、切符、半券、本の帯など

 これらのものは時系列、つまり日付に沿って並んでいるだけで、カテゴリ分けはされていません。(36ページ)