営業活動はビジネス活動の一部である。営業部門内の連携はもちろん、他の部門との協力も欠かせない。

 ところが現実には、無駄な報告や社内での確認事項、帰社しての日報記載などに時間がかかり、その分、顧客への対応が遅くなってしまう。その結果、売上が立つまでの期間も長くなり、下手をすれば成約できた可能性の高い契約を取りこぼすといった事態が頻発する。いわゆる「機会損失」である。

安田大佑氏
セールスフォース・ドットコム
コマーシャル営業本部 ディレクター

 セールス フォース・ドットコムの安田大佑氏は、ここに営業担当者の仕事の運び方についての「個人差」という問題が表れると言う。

「顧客訪問の前に、どのような準備が必要か」「どのタイミングで何をすべきか」といったルールが決まっているわけではなく、新人や経験の浅い営業担当者はなかなか成績が上がらない。要するに、標準化されたプロセス、いわば〝型〟のようなものが共有されていないのだ。

 この型を身に付けるにはある程度の経験が必要だ。しかし、新人や経験の浅い営業担当者にはそれがない。だから、ベテランとの間に「個人差」が生じ、それがそのまま業績に表れる。

「次に何をすべきか?」を誰が教えるのか

 企業規模にかかわらず、この「個人差を埋める」マネジメントができていないことが、経営者に共通する課題意識だろう。

「1人1人の社員のパワーをいかに高め、業績に結び付けるか」

 言い換えれば、型ができれば営業力を底上げし、さらには売上にもインパクトがあるはず。では、その型を誰が教えるのか?

 営業の現場では、多くの場合、経験の浅い営業担当者や新人のトレーニングを先輩のベテラン社員が担う。期間は数カ月というのが相場だろう。だがそれで「型を習得した」と考えるのは大間違い。いざ、単独で行動してみると、彼ら彼女らは「次に何をすべきか」を判断できない。

「型のない」営業担当は、えてして「目の前に山積していること」から着手する。それらは必ずしも「本来やるべきことと」とは一致しない。ベテラン社員のコーチング不足といえばそれまでだが、業績貢献をしたいベテランにしてみれば、後輩のコーチングなど一銭の得にもならないわけで、最低限の「作法」を教え、とっとと解放されたいというのが本音だろう。

 要するに、現場に「コーチ」がいないから、いつまでたっても現場の仕事の仕方は変わらないし、経営者はもどかしい思いをし続けることになる。勘のよい経営者であればおわかりだろう。この課題の根本的原因は、人的リソースではなく「ルーティン」にあるのだ。
 

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