ダイヤモンド本誌5月23日号に掲載された日本郵政の特集を読みました。最初にお断りしておきますと、筆者は、かつて郵政民営化の過程に深く関与し、今も関連の情報がたくさん入る立場にあります。その立場から見て、今回の特集の内容はちょっと偏っているように感じました。ダイヤモンド・オンラインの連載コラム執筆者という立場に遠慮して、口をつぐむことは、筆者の経歴を知る読者にも奇異に映るでしょうし、なにより筆者にとって、これは看過できない問題なので、この場を借りて、この特集に対して反論するとともに、ジャーナリズムの問題へのインプリケーションを考えたいと思います。

一面的すぎる分析

 筆者が感じたこの特集の問題点を挙げ出したらきりがないので、ここでは二つだけ指摘したいと思います。第一の問題点は、様々な論点についての結論を一面的な分析から決めつけ過ぎではないかということです。

 例えば、西川社長の人事について、“官邸はぎりぎりまで後任候補に打診を続ける意向で、「色よい返事をもらえなければ、麻生首相が直接口説くこともありうる」”と書かれていますが、自分が知る限り、事実と異なるように感じます。西川社長を更迭しようと血道を上げているのは鳩山総務大臣だけです。

 かんぽの宿問題についても“ガバナンスの重大な欠陥であり、「かんぽの宿」問題の本質も正しくこの一点にある”と書いていることです。確かに、この問題を巡っては、売却先の選定プロセスにおいて多少の瑕疵があったのかもしれません。しかし、問題の本質は、国営時代に多額の資金を投入して野方図にかんぽの宿を作ったという官の体質にあるのではないでしょうか。

 ついでに言えば、かんぽの宿については、手続きの問題点が詳細に書かれていますが、それ以外にも様々な論点があります。例えば、オリックスへの売却価格を批判する総務省のコメントを載せていますが、かんぽの宿の資産価値は、去年12月の段階で総務省の委員会がデューデリでもオリックスへの売却価格よりも低かったのです。