2004年に行われた厚生労働省の調査によると、成果主義は半数以上の企業ですでに導入され、従業員1000人以上の企業に限れば8割を超えています。今や成果主義は日本企業とって、スタンダードな人事制度になりつつあるのです。

 今の上司が若手だった頃は、まだ年功制が残っていた時代。昇進や昇給のスピードもほぼ横並びで、ある意味、上司の評価をそれほど気にする必要はありませんでした。「◯歳までに試験に受かったらこのポストにつき、給料は◯万円アップ、その次は……」という先々のキャリアや給与モデルが見渡せていたため、人事や昇給はいわば想定内。部下の「納得感」は高く、上司がいちいち昇進の理由に言及する場面は、そう多くありませんでした。

 しかし、上司の評価が部下の出世や給与額に直結する成果主義では、なぜそう評価したのかを上司自身が説明し、部下の“納得感”を作り出す必要があります。ここでも、やはり上司のコミュニケーション力が部下を納得させる武器になるのです。

 でも、これが実に難しい! 私が編集長を務めていたエンジニアのためのキャリア支援サイト『Tech総研』にも、成果主義にまつわる投稿が多数寄せられます。エンジニアは仕事の成果が定量化しづらく、客先に常駐していて上司と離れて働くことも多いため、成果主義が機能しにくい職種です。

 そのエンジニアの声でやはり目立つのが、「与えられた目標はすべてクリアしているのに、ろくな説明もなく評価が下がった」「同じ成績なのに、なぜか同僚だけが高評価。上司の覚えがいいからでしょうか?」といった、“納得感”のなさから出る不満です。

 これは具体的な数字でも表れています。労働政策研究・研修機構では、2004年に成果主義を導入した企業の従業員3000人を対象に、導入前と導入後の査定への納得感を尋ねています。「賃金や賞与の判断材料となる評価」に対して、「納得感が高まった」は15.1%。反対の「低下した」は28.8%と倍近くなっています。