マイケル・デル マイケル・デル(1965~)は負け知らずだ。新聞購読の売り込みを振り出しに、世界を相手にコンピュータの販売をするまでに成長した。

 デル自身を裕福にしたのはコンピュータという製品そのものではなく、その販売方法だった。デルコンピュータ社はコンピュータのダイレクト販売のパイオニアだ。設立当初の経営方針を貫き通すことで成功をおさめた企業の立派な実例でもある。

 デルコンピュータの場合、その経営方針は、注文に応じた生産、低い在庫水準、直接販売、そして顧客理解である。

 インターネットはデルにとって、まさに神の恵みだった。世界中の消費者に売り込むのに、これ以上の方法があるだろうか。ダイレクト販売のビジネスモデルを武器にした成功のおかげで、デルはフォーチュン500企業番付で最年少のCEOとなった。

生い立ち

 マイケル・デルは、少年時代に事業家としての一歩を踏み出した。1965年2月23日、テキサス州ヒューストンに生まれ、わずか12歳のとき、初めて商売をする機会にめぐり合った。同年代の子どもたちと同じように、デルも一生懸命切手を集めていた。デルが周りの仲間と違っていたのは、その集め方だった。デルは学校の友だちと切手の交換をせず、競売の業者と連絡を取り合い、自分でつくったカタログをその業者に送っていた。注文を受けてから、その切手を探しまわった。このダイレクト販売の手法や起業家的才覚が、早くからデル本人の将来を示していた。

 デルは小さいころすでに、斬新な視点と情熱を武器にして商売の世界に入り込んだ。学校の夏休みのアルバイトで、ヒューストン・ポスト紙の定期購読の売り込みをしている。新聞社が用意した電話帳を頼りに手当たり次第にダイヤルを回すのが最良の方法ではないことに、すぐ気がついた。