専門家とのトラブルで苦労した相続のこと、遺族が亡くなったあと、対策をしていなくても、自分たちで相続の手続きができることをお伝えしてきました。とはいえ、相続が始まってからでも節税できる方法は残されていますが、やはり、生前にできることのほうがはるかに多いのです。今回は生前にきちんと準備をしたことで、家族の和を乱すことなく、うまく節税までできた例を通して生前対策を紹介します。

意思を伝えて価値を残す

 相続をどのようにしていくかは、現在、財産を所有する人の権利でもあり、責任でもあるといえます。

 たいていの方は、財産を配偶者や子どもに残してあげたいと考えています。財産を残したいという思いのベースにあるのは、「残された家族に幸せになってほしい」という願いでしょう。財産があれば、生活にゆとりが持てたり、将来の不安を解消できたりするからです。

分相応で維持しやすい財産を残すことは、配偶者や子どもたちにとっても幸福なことです。

 一方で、財産の管理が煩わしく、負担となる形で残した場合や、分けられない不動産など「争いのもと」になるような残し方をした場合、財産がデメリットになります。財産を残すことはよいことのはずですが、それによって負担や争いが生じるのであれば、むしろ残さないほうがよかったということになりかねません。

相続は家族の絆を深める機会にしたい

 こうして考えてみると、財産を残す人の考え方一つで、相続はメリットにもデメリットにもなります。