全日本空輸(ANA)と日本通運、近鉄エクスプレス(KWE)が国際航空貨物事業で手を組む。3社は12月18日、企業顧客向けに小口貨物の急送便を手がける共同出資会社を2008年4月に設立することで合意した。

 世界市場で4強と呼ばれる総合物流企業の独DHL、米UPS、米フェデックス、蘭TNTに、国内勢は圧倒的な差をつけられている。遅ればせながら、外資に対抗する“日の丸連合”が誕生するのだ。

 新会社はまず日本と香港間、上海間でサービスを開始し、初年度の売上高目標は20億~30億円。台湾や韓国などアジア圏でサービス範囲を順次拡大し、5年後に売上高500億円を目指す。長期的には、ANAが加盟しているスターアライアンスグループの航空会社との連携で欧米を含めたサービス展開を考えている。

 出資比率はANAが34%、日通とKWEは各28%。残り10%は他のフォワーダー(貨物集荷業者)に出資を呼びかける。フォワーダー業界で国内1位の日通、2位のKWEという最強連合からの提案だけに、フォワーダーを傘下に持つ阪急阪神ホールディングスや商船三井など各社は参画を検討すると見られる。

 だが、フォワーダー業界3位である郵船航空サービスは事情が異なる。別の連合を形成する可能性が濃厚だ。

 郵船航空サービスの親会社である日本郵船は、貨物航空会社である日本貨物航空(NCA)を傘下に持つ。日本郵船は2005年にANAから保有株を取得してNCAを子会社化し、ANAからの出向や委託で賄っていた人材、整備などの自社化を進めてきた。再びANA陣営に入るとは考えにくい。となると、「日本航空(JAL)とNCAで連携するのが自然」(業界関係者)である。

 海運会社である日本郵船が空運にどこまで深入りするかは業界関係者のあいだでも見方は分かれるが、多額を投じたNCAを再建するための打開策は不可欠。JALと組めば輸送網が広がる。経営再建中のJALにとっては、主力取引行の系列である三菱系で、かつ業績好調な日本郵船であれば、いろいろと支援を頼みやすい。

 また周囲を見ると、日本郵船グループと国際貨物で提携しているヤマトホールディングス、JALと国内貨物で提携している佐川急便など数々のプレーヤーが存在する。今回の3社連合に刺激を受け、日本郵船を中心に第2の巨大連合が結成されるか、あるいはさらに分かれて第三陣営までもが形成されるかもしれない。

 これまで国内物流各社は相互補完を図って数多くの提携を結んだが、大半は緩やかな関係。ある首脳が業界相関図を「意味がない」と指ではじくほど、実りは小さかった。その間に外資大手は思い切った再編によって勢力を強めた。

 今回の連合の出発点も、書類や製品サンプルなどの小口貨物を中心に扱ってきた外資総合物流企業が大口貨物に進出して、日本の顧客を奪っていることに対する防衛策にすぎない。
 
 アジアおよび世界で伍していくにはさらに大胆な戦略の積み重ねが必要だ。“意味のある”合従連衡(がっしょうれんこう)が急がれる。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 臼井真粧美)