2015年、景気は上向くのか失速するのか、よく分からない状況だ。先日発表された景気動向指数は3ヵ月ぶりに悪化。しかし、街中の空気感としては景気が上向くかもしれないと思わせる要因、兆候がいくつかある。長期にわたる原油安もそのひとつだが、エコノミストでは気づきにくい、マーケティングの人間だから分かる兆候というものもある。そのひとつが、ロックな感覚、空気感の高まりだ。

 ロックな空気感が高まるとなぜ景気が上向くかについては後述するが、まずは昨年、いかにロックなものが台頭してきたかを紹介する。音楽やマンガなどのカルチャーは常に時代の空気を先取りするが、まずはその音楽シーンで大きな変化が起きている。

続々登場する新世代ロックバンドに
共通する「破壊衝動」

 2014年の音楽業界はAKBグループと嵐を筆頭とするジャニーズ系の寡占市場。この2つのグループしか売れなかったと言ってよい。オリコンの年間シングルチャートにおいて、この2グループ以外で上位25位以内にチャートインしたのは「EXILE TRIBE」のみだ。ちなみにベスト5はAKB48が独占している。

 しかし、このような状況のなかにも変化はあった。それが、2010年以降にデビューした新世代バンドの台頭で、筆頭格がシングル3枚をトップ5(週間チャート)入りさせ、紅白歌合戦にも出場した「SEKAI NO OWARI」(以下、セカオワ)だ。年間チャートでは「スノーマジックファンタジー」という曲が49位に入っただけだが、週間チャートでは1位を獲得。一昨年あたりから大学生あたりの人気が高まっていることを感じていたが、昨年はそれがブレイクしたと言える。ここでセカオワをロックバンドと分類してしまうことに異論のある人もいるかもしれないが、彼らのスタート地点はパンクロックだし、そのバンド名のセンスは十分にロックだ。

 音楽としてのロックについていえば、昨年の秋から年末にかけて注目すべき女性ロックアーティストが次々と登場した。たとえば、人気シンガーソングライターの「YUI」が、その美しい黒髪をバッサリ切ってマッキンキンに染め、清楚なイメージを一新。名前も「yui」に変え、「flower flower」というロックバンドを結成。ギターとボーカルを担当している。結成は2013年で同年7月に配信限定シングル「月」を発表。2014年11月にリリースした1stアルバム「実」はオリコン最高位5位となっている。アルバム収録曲で2ndシングルの「神様」など特にソリッド感のあるロック曲だ。

 このアルバムに関して「yui」自身は、「心の中には“破壊”という感情があったのは確かです」と語っている。ロックとは破壊衝動の音楽なので、その意味でも「yui」は正真正銘のロック女である。

 クリスマスイブの12月24日には「ミオヤマザキ」というロックバンドがデビューした。情報が少なく詳細が分からないのだが、ライブシーンでは女子高生を中心に10代の女子にカルト的な人気だという。ボーカルで、たぶんリーダーのヤマザキミオは現役のキャバ嬢だという情報もある。