信頼回復が急務の朝日新聞で<br />露呈した「大企業病」の深刻渡辺社長(左)率いる新体制で、朝日の紙面は今後どのように変わるのか
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 発行部数は昨年7月の720万部超から10月には702万部に減少。冬の社員のボーナスは前年比で2割減り、今夏のボーナスは「もっと下がるかもしれない」(朝日新聞関係者)。

 朝日新聞による戦時中の従軍慰安婦に関する誤った記事の取り消しが遅れ、これを「謝罪すべき」と批判したジャーナリスト・池上彰氏のコラム掲載を同紙が見送った問題について昨年末、中込秀樹・元名古屋高等裁判所長官を委員長とした第三者委員会が検証結果の報告書を発表した。

 ここで明らかになったのは、ボーナス以上に現場記者の士気を低下させた、経営陣の迷走極まる「危機管理」だった。

 朝日は昨年8月5、6日の特集で、慰安婦に関する「吉田証言」を虚偽と認め、記事の取り消しを表明した。だが特集の文中にはおわびの文言はなく、「なぜ謝らないのか」と強い批判を浴びた。

自己保身に走った上層部

 報告書によると、7月時点で検討されていた特集の紙面案にはおわびの文言があったにもかかわらず、木村伊量前社長が反対を表明。その後の経営・編集幹部の会議でも「この問題を放置してきた歴代社員の責任を問うのか」「なぜ、今朝日にいる人が責任を取らないといけないのか」といった、先輩への“遠慮”と自己保身に満ちた意見が出されたというのだ。

 池上コラムの掲載見送りについて、木村氏は9月の記者会見で「編集担当の判断に委ねた」と述べたが、報告書は「実質的には木村氏の判断」と断じた。

 それも、社として謝罪しない方針を決めたからとか、木村氏の「逆風に負けず頑張るぞ」という言葉が社のホームページに掲載されるのと同時だからという、あまりに内向きの理由によるものだった。ある朝日記者は「あんた(木村氏)が載せるなと言ったんじゃないか。報告書で明らかになった最大の汚点だ」と憤りを隠さない。