旅行業界では、日本から海外に出る旅行者の流れをアウトバウンド、外国人旅行者が日本を訪問する流れを訪日インバウンドと呼ぶ。今回は後者に焦点を当て、観光のみならずさまざまな目的で日本を訪れる外国人旅行者に対し、商品の多様化を推進したり、組織力を生かした国際誘致までを行うJTBグループの事業をリポートする。

 近頃、国内の各所で見掛ける外国人の数がめっきり増えた。円安の影響も少なくないが、観光立国を目指す官民の取り組みが結実しつつあるともいえるだろう。JTBグループは訪日インバウンドにおいても、その先駆として訪日外国人たちの幅広いニーズに応えてきた。

リピーターを呼ぶ
ツアーに注力

佐藤善行
JTBグローバル マーケティング&トラベル(JTBGMT)FIT事業部 商品戦略推進部長

 JTBグループは、外国人旅行者の誘致を目的として1912年に設立された。訪日インバウンド業務こそ、その源流だ。訪日外国人向けの「サンライズツアー」は64年に誕生し、実に半世紀もの歴史を有している。

「これからの50年は、商品・サービスの“厚み”と“広さ”を共に追求し、新たな価値を提供していきます。東京、富士山、京都などといった定番コースを回るツアーを提供する一方で、江戸切り子のグラスを作ったり、すしを握ったりする体験ツアーのように、日本の新たな魅力を発信する企画にも力を入れています」

 こう説明するのは、JTBグローバルマーケティング&トラベル(JTBGMT)FIT事業部の佐藤善行商品戦略推進部長だ。定番ツアーが中心の「サンライズツアー」に加え、2013年には訪日する外国人に日本の文化や地方の新たな観光コンテンツを体験してもらうブランド「エクスペリエンスジャパン」を立ち上げた。急増するアジアからの訪日旅行者向けには、主要言語による音声ガイドを搭載したバスで、ショッピングや果物狩り、温泉体験などのツアーを提供し、好評を得ている。

「20年までに年間2000万人の外国人に訪日してもらうという国が掲げた目標を達成するには、定番のツアールートのみならず、地方にスポットを当てたプログラムの地理的な“広さ”が必要です。また、フルサービスを求める従来型のパッケージツアーから、旅行の目的が明確な最近のお客さま対応の体験型・季節商品まで“厚み”のある商品でリピーターを増やしていく取り組みも重要。

 日本は観光素材の宝庫ですが、海外の方が本当に望んでいるものを、望んでいる形と価格で提供するには、相応の“目利き”が求められます。これまでの知見を生かした新たな商品開発を行っています」(佐藤部長)

 

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