テレビやラジオで活躍するアナウンサー。フリーのアナウンサーも増えていますが、ほとんどは就職活動を経てテレビ局に入社した社員アナウンサー、“局アナ”です。的確にニュースを伝えたり、臨場感溢れる実況を行ったり、個性を発揮して番組を盛り上げたり…と、テレビ、ラジオ番組に欠かせない存在であるアナウンサーたちはどのように育っているのでしょうか。

[写真] 眞嶋和隆

女子アナの話はなぜ伝わるのか<br />新人を喋りのプロに変える“耳トレ”の秘密報道局の一角で、13時過ぎから番組の打ち合わせ開始。全体の進行確認だけでなく、各コーナーの担当ディレクターが代わる代わる打ち合わせテーブルに訪れて、その日の特集やニュースについて、キャスターたちに説明をする。質問や意見が次々と繰り出され、活気溢れる現場だ。

ICレコーダで育む「自分の声に気づく力」

「ウクライナの大統領選挙から一夜明けた26日、東部ドネツクの空港を包囲していた親ロシア派の武装集団に向け、ウクライナ軍が空爆に踏み切りました…」

 東京・赤坂のTBS本社11階にあるアナウンス部の会議室では、研修中のアナウンサー笹川友里さんが練習用のニュース原稿を読む声が響き渡っています。

 笹川さんは1年目に制作職を務め、2年目にアナウンス部に社内異動となったアナウンサー。一緒にICレコーダで録音した声を聞き、「どこが気になった?」と、尋ねるのは指導役の清水大輔アナウンサーです。

「親ロシア派の『親』の部分が少し強かったように思います」「そうですね、他には?」清水さんは再度、録音した音声を流します。原稿を読み、録音した音声を聞いて、発音や発声、アクセントで気になる部分を修正してまた原稿を読む……。アナウンスの基礎を学ぶ研修は、こうした地道な訓練の繰り返しだといいます。

「新人アナウンサーへの研修は約3カ月間。新入社員研修を終えた月から8月までです。その後、クッション期間の9月を経て、番組改編期の10月から本格的に番組のレギュラーに入る、という流れが一般的です」と話すのは清水さん。

 冒頭で紹介した笹川さん他、新人アナウンサーの研修を担当します。清水さんは、札幌テレビ放送を経て1993年にTBS入社。主に野球、サッカー他、さまざまなスポーツ中継などを担当するベテランです。

 3カ月間の研修中は、1コマ1時間半の授業を1日3コマ受講します。研修のプログラム、テキストは長年、改訂を重ねながらTBS のアナウンス部で受け継がれてきたオリジナルです。

 アナウンサーの研修は、まず腹式呼吸でお腹から声を出す練習から始まります。「演劇も歌も同じかと思いますが、浅い呼吸で発声すると、喉が開かず、いい声が出ません」。続いて、正しい口の形で正しく発音する練習をします。人によって癖があったり、間違った発音をしていたりするので、日本語の発音を一から学び直します。