黒物家電という言葉をご存じだろうか? 

 ご存じのように、冷蔵庫や洗濯機など、生活に必要な家電を白物家電と呼ぶ。それに対して黒物家電は、「家事には必要がない家電」という意味だ。主に「テレビやレコーダーをはじめとするAV機器を指す」と考えてもよいだろう。

 今回は、不景気でも売れている黒物家電の傾向を調べてみる。売れ行きそのものは、各種のランキングを見れば一目瞭然だが、ここで調べたいのは、「ユーザーがどんなコンセプトで製品を選んでいるか」だ。

 さまざまな関係者にヒアリングしたところ、不景気にもかかわらず、大画面テレビはある程度売れているようだ。地デジへの完全移行が近づき、必要に迫られて買っている人も多いからだろう。ただし、全体的な傾向としては、景況感の悪化がはっきりと現れている。

 「42V型程度までなら、同じサイズでも中級以下のモデルが人気です。付加価値より、最低限のモデルを求めている方が増えています」(ヤマダ電機の佐俣信一常務執行役員)

 特に北京オリンピック以降は、そのような傾向が顕著だという。大画面テレビで人気なのは、以前のレポートでもお伝えした37V型で、その次は32V型となっている。

 売れセンの機種を狙っている人たちは、いわゆる「マス」だ。だから、画面サイズや画質、付加機能にこだわるより、価格重視で買っていく。黒物家電とはいえ、現段階のテレビは必要に迫られて買っているので、白物家電的な売れ方をしているのだろう。

 レコーダーの売れ行きも気になるところだが、こちらは予想ほど売れていないというのが全体的な傾向だ。テレビに録画機能を搭載したモデルが増えていることも一因だろう。また、Blu-ray対応機種でも8万円前後と手頃な価格帯に落ち着いている。

 「HDDは、250GB程度でシングルチューナーの手頃なモデルが人気ですね。不在が多い家庭でなければ、250GBでも十分でしょう。ここ数ヵ月は、テレビ・レコーダーともにハイグレードモデルが売れなくなっています」(ベスト電器福岡本店の澄田匡俊氏)

 大画面テレビとレコーダーを最も効率よく買うなら、ボーナスシーズンの売れ残りモデルを来年年明けあたりに狙うのがポイントだろう。特に高級なモデルが大きく値下がりする可能性もある。