「イスラム国」という表記は、イスラム教やイスラム教徒というものに対してネガティブなイメージを与えてしまうし、実際に彼らもそのことで困惑したり不安を感じたりしている。というわけで僕はメディアやSNSなどでこの表記を使わない。欧米のメディアでも広く使われている「ISIS(アイシス)」と表記する。

 そのISISに殺害された戦場ジャーナリスト・後藤健二さんへの賞賛と共感の声がやまない。2月8日にも17時から全国各地(札幌、仙台、東京、千葉、大阪、京都、名古屋、福岡)で追悼集会が開かれ、多くの人がろうそくをともし黙祷を捧げたという。

 ネットではさまざまな批判や怪しげな情報も飛び交っているが、その一方で後藤さんの行動、姿勢、彼が「伝えたかったこと」に対する共感の声も高い。しかし、僕はこのような状況に大きな違和感を感じている。念のために断っておくが、僕は後藤さんの行動を批判したいわけではないし、彼の死をおとしめるつもりも毛頭ない。僕が違和感を感じるのは後藤さんに対してではなく、後藤さんに共感し、賞賛している人たちに対してである。

日本中に共感を呼んだ
『あさいち』柳澤キャスターのコメント

 後藤さんに共感し賞賛する人たちの声を集約すると、「私たちは約束します。後藤さんのまなざしのその先を」みたいなことになる。

 たとえば、ネットでも大きな話題になり、Yahoo!ニュースでも流れた、「後藤さん殺害事件で『あさイチ』柳澤キャスターの珠玉の1分間コメント」という記事がある。この記事は大きな共感を呼び、Facebookのシェア数は約8.3万にも達している(2月9日午前3時現在)。少し長くなるが、その柳澤キャスターのコメントを全文、引用する。

 「冒頭なんですけど、すみません。昨日から今日にかけて大きいニュースになってきた後藤健二さんなんですけど、ちょっと、あえて、冒頭で、一言だけ…。

 僕も後藤さんとはおつきあいがあったものですから、一番、いま、強く思っていることは、ニュースではテロ対策とか過激派対策とか、あるいは日本人をどうやって守ればいいか、が声高に議論され始めているんだけど、ここで一番、僕らが考えなきゃいけないことというのは、後藤健二さんが一体、何を伝えようとしていたのか、ということ。

 戦争になったり、紛争が起きると弱い立場の人がそれに巻き込まれて、つらい思いをするということを、彼は一生懸命に伝えようとしていたんじゃないか。それを考えることが、ある意味で言うと、こういった事件を今後、繰り返さないための糸口が見えるかもしれない…。

 われわれ一人ひとりにできることというのはものすごい限界があるんですけど、この機会にそういうことを真剣に考えてみてもいいのでは…。それが後藤さんが一番、望んでいることじゃないか。そう思ったものですから、冒頭なんですけど、ちょっとお話をさせてもらいました」