稼ぐ力を回復させている新日鐵住金に、暗雲が垂れ込めている。2015年3月期決算で、当期純利益の見通しを前期比26%減の1800億円へと下方修正したのだ。

 元凶は、ブラジルで油田掘削用のシームレス(継ぎ目なし)鋼管事業を展開するVSB(仏バローレックと旧住友金属工業の合弁)にある。原油価格の下落や工期の遅れにより、686億円もの減損処理を強いられた。

 巨額の特別損失を計上するにもかかわらず、「旧新日本製鐵と旧住金が統合時に持ち寄った資産で、“ブラックリスト”入りしていた案件で、さしたる驚きはない。業績好調を背景に統合作業が総仕上げに入っている」(鉄鋼商社幹部)と、好感する声すら聞こえてくる。

 もっとも、話はこれだけにとどまらない。むしろ、原油価格の下落に伴うリスクが高まるのはこれからだからだ。特に、旧住金が強く収益性の高い、シームレス鋼管の利益悪化が懸念されている。

 米ベーカー・ヒューズが発表している北米油田の掘削動向を表す「リグカウント」は前年比144基減の1633基と振るわない。

 公式には、「長期的にはエネルギー関連の需要は復活する」(太田克彦・新日鐵住金副社長)としているし、「資源メジャーとは長期契約を結んでおり、影響は軽微」(新日鐵住金幹部)という。直近では、15年3月期のシームレス鋼管出荷見通しを前回予想の118万トンから120万トンへ引き上げた。