昨年、日本で大反響。今年は韓国でも出版された『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』の著者である起業家・杉本宏之氏が、本書の中にも登場する起業家たちと語り合う。第6回はテイクアンドギヴ・ニーズの野尻佳孝会長の登場だ。

杉ちゃんを電話で励ましながら
自分にも「負けるな!」と
言い聞かせていた。

編集部 FM東京の『タイムライン』という番組に『まえがきは謳う』という注目書籍の前書きを紹介するコーナーがあって、本書が取り上げられていました。そこで読まれたのが、野尻さんが登場するプロローグの部分。民事再生した直後の真夜中、杉本さんに電話されたわけですが、どのような気持ちで電話されたんでしょう?

起業家対談シリーズ第6回 野尻佳孝<br />ボトムアップの改革で危機を乗り越えた野尻 佳孝(のじり・よしたか)[テイクアンドギヴ・ニーズ代表取締役会長]

1972年生まれ。1995年に住友海上火災保険株式会社(現 三井住友海上火災保険株式会社)入社。1998年、テイクアンドギヴ・ニーズ設立。

野尻 あの時は、堀江君と飲んでいたんですよね。電話したのは夜中の3時を過ぎていたと思うけど、飲み始めたのはもっと早い時間で、杉本君のエスグラントが民事再生したというニュースを知って「杉を呼ぼう」と早い時間から話していた。でも、さすがに気が引けるところもあって、二人で迷っていたように記憶しています。

杉本 電話をいただいたのは3時半ごろでした。あの時、しかもあんな時間に電話をしてくれるのは、本当に信頼しあえてる人か、無神経な人のどちらかですよね(笑)。

野尻 そうだね。堀江君と2人でほどよくお酒も入って「やっぱり呼ぼう」ということになった。こういう時だからこそ、友として声を掛けてやるべきだっていう考えが、堀江君と一致したんだよ。杉がどう思うとしても「がんばれ」という気持ちを伝えておこうって。

杉本 本当にうれしかったです。それまで眠れずにベッドの中で自問自答を繰り返していたんですけど、お二人からの電話を切ったあと、ようやく眠ることができたんです。

野尻 結局、飲みには来なかったけどね。

杉本 電話を切る時には4時を過ぎてたんですから、普通は行かないでしょ(笑)。

野尻 ただ、この本のプロローグのように文章にすると「いい感じ」にもなるけど、実際はもっと切羽詰まってた気がするね。世の中はリーマンショックの負のスパイラルの最中で、たぶん、僕なんかは杉ちゃんを励ましながら、自分にも「負けるな!」って言い聞かせてたんじゃないかな。