自民党議員連盟は3月11日に、政府紙幣発行などを求める政策提言を麻生太郎首相に提出した。

 深刻な景気悪化になにか有効な対策を取らねばという思いは理解できるが、政府紙幣に関しては慎重に考えるべきだろう。

 筆者の周辺の人びとに政府紙幣の印象を聞いてみると、「そんな変なことをして大丈夫?」と怪訝な顔をする人のほうが遥かに多い。与党の支持率上昇にはつながらないだろう。

 「円天」を信じてしまった人が世の中にあれだけ存在したことを考えると、もしかすると「政府紙幣っていいじゃない」と思う人が意外に存在するのかもしれない。

 しかしながら、2003年に来日して政府紙幣発行を推奨した経済学者スティグリッツが、現在の米国政府にそれを提唱したという話は今のところ聞こえてこない。

 もしオバマ政権がそれを始めるとしたら、市場性米国債の半分以上を保有する海外投資家は恐怖を感じ、売却を始めるだろう。国債増発という通常の手続きを経ずに景気対策を行なうことへの疑念が投資家から噴出すると思われる。

 基軸通貨国の米国ですらそうならば、財政赤字の維持可能性に市場から不安を持たれているイタリアやギリシャのような国ならなおさら政府紙幣発行は危険だろう。