グローバル化を課題に掲げるのであれば、「世界の土俵で戦う」人材が必要だ。ところが日本人は、海外で、あるいは外国人を前にして、自分たちの「常識」を振りかざして損をしてしいることが多い。グローバル企業でトップを務める岡氏は、「アプローチを変えるだけで不要なハンデを背負わなくてもよくなる」と指摘する。

「自分の働きで日本の役に立ちたい」

世界の土俵で戦うための5カ条岡学(おか・まなぶ)
AT&Tジャパン 代表取締役社長
1972年京都生まれ。コーネル大学経済学部卒業後、日本IBMに入社。ネットワーク・エンジニア、プロジェクトマネジャーとして、グローバル企業のネットワーク展開を担当。2000年AT&Tジャパン入社、法人向けITサービス部門のマネジメントを歴任し、2008年にサービス統括エグゼクティブ・ディレクターに就任。日本の中で閉じていたサービス部門をグローバルの組織へ統合し、システムやプロセスの標準化を実現。2010年より現職。GAISHIKEI LEADERSのサポートメンバーとしても活躍する。

 今や海外でビジネス展開している日系企業でグローバル化を課題に挙げていない会社はありません。

 一方で、すべての外資系企業がグローバル化を実現できているわけでもありません。会社によってグローバル化の意味合いや重要性も異なりますので、日系と外資系を単純に比較しても意味がありませんが、両者に共通する課題があります。それは、「世界の土俵で戦える人材」です。

 私はアメリカの会社で働いてきましたが、日本人であることへの誇りと、他の国の人には負けないという気持ちは常に忘れていません。そして、私自身のモチベーションの源泉の一つが、自分の働きで日本の役に立つというものです。そんな思いもあり、日本人が外国人と接する際に、些細なことで損をしているシーンを見かけると、もどかしさと悔しさを覚えます。

「日本と外国」のような二極的な見方は好きではありませんが、あえて身近な失敗例に目を向けて、これから世界を舞台にチャレンジしていく日本人が、「世界の土俵で戦える人材」となるためのポイントを5点にまとめました。 

リスペクトされるためには
リスペクトしよう

 外国人はあまり働かない、いい加減だと思い込んでいる日本人が少なくありません。ですが、本当にそうなのでしょうか。日本人がそのような先入観で外国人を見下す光景を何度も見たことがありますが、その都度残念な思いをしてきました。

 会議の合間に日本人同士で「あいつらにはどうせ分からないから」と口に出す人は、会議中にもその本心が言動に表れるものです。そういう日本人は、当然、外国人たちから信用されません。グローバルな戦いではその時点でほぼ「負け」です。なぜなら、信用されないということは、リスペクトされないことを意味しますので、そういう人はあまり声を掛けてもらえなくなり、有用な情報や本音がもたらされません。

 リスペクトと関心を示す人に対して好意的になるのは、万国共通でしょう。それなのに、プライドが「おごり」となっている、あるいは、態度をはっきり示さない日本人が多いのは残念なことです。

 例えば、外国人たちの輪の中で日本人があまり発言をしない光景をよく見かけます。英語に自信がなく、自分の発言が誤解を招くことを心配する気持ちは理解できますが、あいまいな態度の方が誤解を生みやすいと考えるべきです。