16:9の画面比率を持つハイビジョン動画。地上デジタル放送の開始や大型液晶テレビの普及により、急速に浸透しつつある。そして、ただハイビジョン放送を見るだけでなく、自分で撮影する楽しみ方も広がっている。

 ハイビジョン動画を撮影するには、対応する機器が必要だ。少し前までは、このハイビジョン動画を撮影するためには、高価な機器が必要だった。そのため、一部の人たちの趣味にとどまっていた。

 しかし、最近では普及価格帯のハイビジョン動画撮影機器が登場。手軽にハイビジョン動画を撮影することができるようになった。しかも大げさな機器ではなく、デジタルカメラの機能の一部として提供されていたり、1万円ほどで胸ポケットに入るくらいの小型のビデオカメラが登場したことで、よりいっそうハイビジョン撮影が身近なものになっているのだ。

ニコン D90
デジタル一眼レフカメラで初めて動画撮影機能を搭載したニコンの「D90」。豊富な交換レンズを使った動画撮影ができるため、表現の幅が広がる。

 特に、デジタル一眼レフカメラでのハイビジョン撮影機能は、大きな撮像素子と豊富な交換レンズを使った撮影が行える。一部機能の制限(1回の録画時間など)はあるものの、映画のような立体感のある動画が撮影できるため、わざわざハイビジョン動画の撮影機能のある機種に買い換える人が多い。

 正直なところ、このような機器で撮影したハイビジョン動画は、テレビのハイビジョン放送に比べればまだまだ及ばないといった感はあるが、何より手軽にハイビジョン動画を撮影できるということが、消費者の琴線を刺激しているといえる。

 また、このハイビジョン動画の普及に一役買っているのが、再生環境だ。撮影した動画は、再生しなければ意味がない。現在、家庭用のハイビジョン対応液晶テレビやパソコン用ディスプレイでは、HDMI端子が搭載されているものが多い。ハイビジョン動画対応の撮影機器にもHDMI端子が搭載されていることが多いので、ケーブル1本で簡単に接続・再生が行えるのだ。

 加えて、YouTubeなどの動画共有サイトもハイビジョン動画の投稿・再生に対応を開始したことで、撮影したハイビジョン動画を気軽に世界中に公開することができるのも、人気に拍車をかけている要因のひとつだ。

 個人的には、動画撮影およびハイビジョン映像にそれほど興味があるわけではない。しかし、実際にハイビジョン動画を撮影し、その動画をパソコンで再生したり、YouTubeにアップロードすると、これほど手軽にハイビジョン動画を扱えることに、軽くカルチャーショックを覚える。

 動画撮影の敷居が下がり、それを再生する敷居も下がり、加えてそれを公開する環境まで整っているのだから、ユーザーとしてはハイビジョン動画が特別なものという感覚はすぐになくなるだろう。今後、撮影機器がどのような進化を遂げていくのかも興味があるところだ。

(三浦 一紀)